王に愛された女
薄暗い空を鳥の群れが横断していく。
「こりゃもうすぐ雨になりそうだな」
そう言って兄は視線を空からガブリエルに戻した。
ガブリエルはフィオーレを見てからもう一度空を見上げた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「私ね、鳥みたいになりたい」
ガブリエルが言うと、フィオーレは「そうか」と明るい口調で言った。
「鳥みたいに背中に羽を生やしてね、空を飛ぶんだ」
「空を?昔からガブリエルは空が好きだな」
フィオーレはそう言ってクスッと笑った。
ガブリエルは「うんっ」と大きく頷いた。
「でも空を飛んでどうするんだ?」