王に愛された女
だが、ガブリエルが感じたのは撃ち抜かれた痛みではなく、何か別の痛みだった。
ガブリエルは服の背中に手を入れた。
背中に入っていたのはいつもお守り代わりに背中に入れていた父の形見だという本だった。
薄い本の途中に、銃弾が挟まっている。
父が、自分を守ったのだろうか?
だが、今のガブリエルはそんなことを考えていなかった。
感情を支配したのは怒りだった。
村人たちを殺したり傷つけたりした敵への怒り。
ガブリエルは拳を固めた。
全身から殺気が立ち昇る。
だが、直後左上腕部が熱を帯び、ガブリエルはうずくまった。
「…ぅ…っ。…ぐぁっ…」
そっと左上腕部を見たガブリエルは信じられない思いでいた。