王に愛された女



 ガブリエルが両手を上げた。彼女は右手を上げようとしたのだろうが、両手を手錠で固定されているせいで両手を上げたようだ。

 フィオーレの目に、ガブリエルの左上腕部が映った。

 ガブリエルの刻印を隠すために、左上腕部には包帯を巻きつけてある。

 ガブリエルを閉じ込めた檻が見えなくなるまでフィオーレは村の門の外に立っていた。

「そろそろ戻ろう」

 デルモンテに言われ、フィオーレは「あぁ」と答えた。

「大丈夫。あの子はきっとうまくやれる。…あの子が何者であっても傍にいたいのなら、昨日姉さんが言った通りだ。オマエも同等の力を得るんだ」

 フィオーレはデルモンテの目を捉えた。

「その同等の力って?」

「…国王が既にその力を得ている。知りたいなら、国王に聞くべきだ」

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