王に愛された女



 オラシオンはチェス盤に乗っている駒を薙ぎ払った。

「さすが王様。ご明察です」

 ルークは悪戯っ子のように微笑んだ。

 オラシオンは舌打ちをして、それから

「後宮に行く」

 と告げた。

 驚いたような顔のルークの脇を通り過ぎ、オラシオンは後宮へ向かった。

◇◆◇◆

 後宮には溢れんばかりに女人が集まっている。

「今日はどの女人にいたしますか?」

 後宮の門番の問いに、オラシオンは後宮の大広間を見渡した。

「アリシアにしよう」

 門番は大広間に入って行き、銀髪を二つに結わえた女人に駆け寄った。

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