王に愛された女
しんと静まり返った廊下には、音ひとつ聞こえない。
ガブリエルは目を閉じた。
どうせルークが帰ってくるには時間がかかるだろうと想定したのだ。
檻の中にいた間は眠れなかったせいもあり、ガブリエルは目を閉じた瞬間から眠りに引きずり込まれた。
「…――――い……―――――おい」
どのくらい眠っていたのだろう、声がかすかに聞こえた。
肩を揺すぶられ、ガブリエルは目を開けた。
「あ、起きた」
上体を起こすと、見覚えのある顔が目の前にあった。
銀青の髪を束ねた、左右の目の色が違う男。
「…あれ?」
「オマエ、ここに来てたんだな」
男が言った。ガブリエルは小さく頷いた。