王に愛された女




「俺はさ、王様に話っていうか聞きたいことがあるから来たんだ」

 嬉しそうに話す男は、ガブリエルの記憶にある彼よりも活き活きしているように見えた。

「お兄さん…誰?」

 ガブリエルは疑問をぶつけてみた。

 どうせ彼は教えてくれないだろうと思いながら。

「俺?ん…別に知らなくてもいいじゃないか?」

「あなたは私のこと知ってるのに、私はあなたのこと知らないなんて不公平だわ」

「それもそうだな。俺はフィオーレだ。ホッカ村って村の村人」

 男、フィオーレが名乗る。

 ガブリエルはそれで満足した。

「なぁ、王様どこか知らないか?」

 ガブリエルは首を傾げてみせた。

「知らない。私、教えてもらってないもの」

 フィオーレは「そうか」と呟いてあたりを見回す。

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