王に愛された女



「ずっと前から、あなたを知っているような…そんな気がするの」

 フィオーレの顔に、はっきりと驚愕の色が浮かんだ。彼の顔に浮かんだ表情に、ガブリエルは戸惑った。

「…フィオーレ…さん?」

 どうしたの、と聞こうとしたガブリエルだが、その前にフィオーレが首を振った。

 かすかに聞き取れる声で

「…そんなわけないさ」

 と彼は呟いた。

 それがガブリエルに対してなのか、それともほかの意味なのかは分からなかったが、ガブリエルはあまり気にしなかった。

 彼は変わり者であるというのがガブリエルの中でのフィオーレに対する印象だったからだ。

 そのとき、王宮にさっきまで聞こえなかった足音が響いた。

「全くルーク、あれほど言っただろう。奴隷から貢ぎ物を選ぶ必要はないと。俺がせっかく女と寝てるときによくも邪魔してくれたな」

 荒々しい声に、ガブリエルは思わず身震いした。

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