王に愛された女



 声は階段を上ってガブリエルとフィオーレに迫ってきた。

「王様、文句を言うのは彼女を見てからにしてください」

 ルークのなだめるような声が聞こえる。

 ガブリエルは怖くなってフィオーレにしがみついた。

 荒々しい声の主が階段から顔を出した。

 筋肉隆々の肢体。

 深緑の髪は短く切られていて、鋭くて透き通るような青色の瞳。上半身が裸のせいで少し日に焼けた肌が剥き出しになっている。

 肩に引っ掛けた黒い上着が風でわずかになびいた。

「いないじゃないか」

 荒々しい男が言った。

「いえ、ここに」

 ルークに腕を掴まれ、ガブリエルは半ば強制的に王の前に連れ出された。

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