王に愛された女



 フィオーレがニヤッと笑う。

「み、見つけてないもん!赤い玉なんか見つけてないもん!」

 言ってからガブリエルはしまったと思った。

「へぇーえ?赤い玉見つけたのか。なんで俺に教えてくれないのさ」

 フィオーレが腕組みをする。

 ガブリエルは渋々、袋から玉を出した。

「これ」

 フィオーレは玉を覗き込んで、「へぇーえ。綺麗な玉だな」と言った。

「うん」

 ガブリエルは頷いた。

 フィオーレが玉を回し、隅々まで見回す。

「あれ?なんか彫ってあるぞ?」

 フィオーレの言葉にガブリエルは驚いて、

「え?なんて彫ってあるの?」

 と上ずった声で聞いた。

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