ブラックⅠ-出会い-
まず目に入ったのは、
月明かりに照らされる小さな窓とコンクリートの分厚い壁。
一瞬、
本当に一瞬私の喉がヒュッと小さな音を立てて呼吸を止める。
綺麗だと思った。
世の中にこんな綺麗な人がいるのかと疑うほどに、
それほどまでに目の前の人物は綺麗で、そして魅了的だった。
黒革のガッチリとしたソファーに、まるでこの世の全てを支配したような雰囲気さへかもし出すほどのオーラを身にまとった人物がゆったりと座っている。
長くスラリとした脚は堂々と開かれ、綺麗でツヤのあるブラウンの髪は丁寧にセットされている。
鋭くまるで野獣のような瞳は私を捉えて離さない。
「金か、 それとも 身体か」
男は形の良い唇を動かすと
どこか色気のある低音ボイスで私に問いかける。
怖い。
瞬時にそう思った。
だけど私にはそんな判断をしている暇もなく、余裕すらない。