ブラックⅠ-出会い-


お金なんてそんなもの、もちろん私が持っているはずもない。



私は一歩、また一歩と脚を進めると、それに合わせてコツコツとテンポ良くコンクリートの壁へと音が反響する。



私は男の前で立ち止まると、肩からするりとストールを下ろした。



震える手を握りしめ、怖くない。大丈夫だと、まるで自分に暗示をかけるかのように心の中で呟く。



男の堂々と開かれた脚と脚の間に、自分の脚を滑り込ませると、片脚をソファーへと預けた。



男はそんな私の行動にさえ動揺を見せることなくただ私み見つめていて、




私は男のシャープで綺麗な頬に手を添えると、グロスで光った自分の唇を無理矢理相手に押し付けた。




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