ブラックⅠ-出会い-
「おい」
俺の低く響く声に女はピクリと反応する。
「俺は、殺し屋じゃねぇ」
「……………」
「でも今日は特別に」
ペタリと床にしゃがみ込む女の元へと脚を進めると
「俺が、殺してやるよ」
その白く細い首をガッと片手で持ち上げ、華奢な身体はいとも簡単に持ち上がる。
「だから今日は機嫌悪いって言ったのに」と後ろではレイジの呆れた声。
女は眉を歪ませ俺が掴む腕を握りしめる。その手は細くまるで力など入っておらず、きっと抵抗する気さえない。
「……あり…がと…」
今にも死にそうだと言うのに、本当ならば恐怖で震える所なのに
女はありがとうと言った。
その言葉を聞いた瞬間こいつにとって、今までの人生がどれほどまでに辛く、そして暗いものかが分かる。