月陰伝(一)
月陰伝
第一章〜月陰会と養父の家〜
深夜。
満月に近付いた月が、煩いほどの光を反射している。
林立するビル群を縫って、未だ人々は喧騒の中にいた。
しかし、そんな人々を見下ろすように、その高いビルの屋上で夜の風を纏って立つ人影があった。
『第一部隊、ターゲット接触まで後三分です』
『『「了解」』』
インカムから聞こえた声に応え、月の光を浴びるように上を向いて目を閉じる。
白い光が瞼を通し、まるで一人、光の世界に身を置いているようだ。
『結〜ぃ、暇だよ〜ぉ。
何か面白い話ない〜?』
緊張感のない声に笑みが溢れる。
「蘭…もうすぐだよ?
あ〜でも…そうだな〜ぁ。
面白い話か〜あっ実は今日、親に勘当されて家を追い出されました〜ぁとか?」
『『『はいぃ???』』』
おお、意外とみんな聞いてたか。
『結ッ、どう言う事だっそれっ冗談だよな?!』
「ははっこれが本当なんだな〜。
気にしなくて良いよ、刹那。
ほら、時間だ」
無理矢理話を切り上げれば…。
接触予想時刻。
『情報部より〜。
ターゲットは、二手に分かれた模様〜。
結さん、フォローお願いします〜。
B地点に八人で〜す。
データ転送しま〜す』
直後、頭に直接映像が浮かぶ。
場所とターゲットの顔を記憶する。
「確認した」
ようやく動ける。
じっと待つのはやっぱり苦手だ。
地味な仕事だけど、それでも多少の気晴らしにはなる。
「行きますか」
トンっと足を踏み鳴らし、そのまま屋上から空中へと飛び出した。
勢いよく飛び降りたが、落下は有り得ない程、ゆっくりだ。
まるで羽毛がフワフワと落ちるように、風に乗って降下する。
「風鸞っ」
呼びかけに応え、風が大きな鳥の形をとる。
同時に左手を前に突き出すと、手首にはめられた腕輪から薄いリボンの様な紐が現れた。
フワリと着地したのは、その鳥に付けられた鞍の上。
同時に、手首から伸びた紐が鞍と繋がり、手綱となる。
「頼むよ、風鸞」
《お任せください。
我が主》
頭に直接響く声に頷き、ビルとビルの間を縫うように飛ぶ。
地上の人々から見えないように不可視の術はかけてある。
一瞬の風となって感じる以外は確認できないはずだ。
変わらず夜の街で過ごす人々を見下ろしながら、目的地へと向かう。
繁華街を一本中へ入った裏道。
何かに追われるように駆ける、男女入り交じった八人の人影。
頭すれすれを目掛けて降下すれば、爆風となって彼らを背後から襲った。
「ッうわっ」
「っっくぅっ」
「っきゃっ」
各々小さく呻くような声を上げて、その足を止めた。
満月に近付いた月が、煩いほどの光を反射している。
林立するビル群を縫って、未だ人々は喧騒の中にいた。
しかし、そんな人々を見下ろすように、その高いビルの屋上で夜の風を纏って立つ人影があった。
『第一部隊、ターゲット接触まで後三分です』
『『「了解」』』
インカムから聞こえた声に応え、月の光を浴びるように上を向いて目を閉じる。
白い光が瞼を通し、まるで一人、光の世界に身を置いているようだ。
『結〜ぃ、暇だよ〜ぉ。
何か面白い話ない〜?』
緊張感のない声に笑みが溢れる。
「蘭…もうすぐだよ?
あ〜でも…そうだな〜ぁ。
面白い話か〜あっ実は今日、親に勘当されて家を追い出されました〜ぁとか?」
『『『はいぃ???』』』
おお、意外とみんな聞いてたか。
『結ッ、どう言う事だっそれっ冗談だよな?!』
「ははっこれが本当なんだな〜。
気にしなくて良いよ、刹那。
ほら、時間だ」
無理矢理話を切り上げれば…。
接触予想時刻。
『情報部より〜。
ターゲットは、二手に分かれた模様〜。
結さん、フォローお願いします〜。
B地点に八人で〜す。
データ転送しま〜す』
直後、頭に直接映像が浮かぶ。
場所とターゲットの顔を記憶する。
「確認した」
ようやく動ける。
じっと待つのはやっぱり苦手だ。
地味な仕事だけど、それでも多少の気晴らしにはなる。
「行きますか」
トンっと足を踏み鳴らし、そのまま屋上から空中へと飛び出した。
勢いよく飛び降りたが、落下は有り得ない程、ゆっくりだ。
まるで羽毛がフワフワと落ちるように、風に乗って降下する。
「風鸞っ」
呼びかけに応え、風が大きな鳥の形をとる。
同時に左手を前に突き出すと、手首にはめられた腕輪から薄いリボンの様な紐が現れた。
フワリと着地したのは、その鳥に付けられた鞍の上。
同時に、手首から伸びた紐が鞍と繋がり、手綱となる。
「頼むよ、風鸞」
《お任せください。
我が主》
頭に直接響く声に頷き、ビルとビルの間を縫うように飛ぶ。
地上の人々から見えないように不可視の術はかけてある。
一瞬の風となって感じる以外は確認できないはずだ。
変わらず夜の街で過ごす人々を見下ろしながら、目的地へと向かう。
繁華街を一本中へ入った裏道。
何かに追われるように駆ける、男女入り交じった八人の人影。
頭すれすれを目掛けて降下すれば、爆風となって彼らを背後から襲った。
「ッうわっ」
「っっくぅっ」
「っきゃっ」
各々小さく呻くような声を上げて、その足を止めた。
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