月陰伝(一)
第十一章〜船上のパーティー〜
”エンジェル号”
天使と言う名に相応しく、白と金で配色された船は、豪華客船と呼んでも遜色ない程の大きさだった。
出港が夕方五時。
太平洋へと出て南下し、再び戻ってくるのが二日後の夕方五時。
パーティーは、毎晩七時からだそうだ。
「久間さん達は、まだのようだな」
「うん。
今受け付けが始まった所だしね。
近くで様子は見てると思うけど、入るのは、あの固まりが中へ入り終わる頃かな」
佐紀と並んで船からは見えない少し離れた場所で、神城一家を待つ間、ターナから貰った船の見取り図を確認していた。
「部屋は、VIPルームみたい。
まぁ、社長一家なら当然か。
あっ佐紀、一応こっちも覚えておいてくれる?」
部屋の見取り図とは違い、細かく線の入った回線や火器管制の書かれたものを手渡す。
「…細かいな…そう言えば船は初めてだ」
建物を制圧する事はよくある。
それとは違い、船は回線が密集していたりと、勝手が違う。
例えば、建物を爆破するのと、船を爆破するのとは違うように、逃げ道や核となる場所があるかないかでも変わってくる。
「万が一の時の為にも、頭に入れておいてね」
「わかった…」
不意に佐紀から視線を感じて顔を上げれば、バッチリ目が合った。
「どうかした?」
「いや…その服、よく似合っている」
「っありがとう。
新作なんだ。
でも、ちょっと色が濃いかな?」
「いいや、結には濃い青や赤が似合う。
この間の黒も良かったけどな」
「本当?」
「ああ、でも……あまり着ないピンクや淡い色のも今度着て見せて欲しいな」
「ふふっ良いよ。
なら、パーティードレスを楽しみにしてて」
「っ…わかった」
照れながらも、然り気無く抱き寄せる佐紀に甘えるように寄り添って、微笑み合う。
そこに、嬉しそうな声が聞こえてきた。
「っおねぇちゃんっキレイっっっ」
その声は、えらくハイテンションな妹だった。
「美輝もよく似合ってるよ」
「えへへっ……あのっ佐紀おにぃさんですか?」
「ああ、初めまして。
君が美輝ちゃんだね?
瀬能佐紀です。
よろしく」
「っこちらこそっ。
っおねぇちゃんをよろしくお願いしますっ」
気合いが入ってるなぁ…。
「美輝、他の人は?」
「もうすぐ来るよっ。
私は…おねぇちゃんを見付けて、走って来ちゃったから…」
「?どっから?」
「あっちの公園の所」
かなり距離があると思うのだけれど…?
「美輝ちゃんは、目が良いんだね」
「はいっ。
両目とも二、0余裕でありますっ」
今時珍しい子だ。
そんな話をしていれば、駐車場の方から、母達が歩いてくるのが見えた。
「っやあっ瀬能くんっ。
久し振りだねぇ」
「お久しぶりです神城さん」
「ああ、君が結華ちゃんの恋人とはっ。
運命を感じるよっ」
「…親父…本当に佐紀さんがお気に入りなんだな…」
「ふんっお前も水くさいっ。
なぜ早くシャドーの社員だと言わなかったっ?
瀬能くんと一緒に指名できたのにっ」
「…それが嫌だから、親父には言いたくなかったんだよ…佐紀さんと比べられたら堪らない…」
嬉しそうな明人さんと違い、刹那は今日もかなり落ち込んでいるようだ。
「刹那、シャキッとしてね。
仕事だと思って掛からないと駄目だよ?」
「はいっ」
「刹那は、その時になったらちゃんとするさ。
だよな?」
「はいっ、お任せくださいっ」
「佐紀は甘やかし過ぎだよ。
油断は禁物。
いくら与一達がいても、神族関係の事態になったら、頼れないからね」
「分かっているよ。
だが結は、もう少し俺を頼ってくれ」
「?当たり前でしょ?
佐紀はいつでもあてにしてる」
「そうか。
ならいい」
「……俺も頑張りますますっ」
刹那が若干泣きそうなのは、なぜだろう…。
天使と言う名に相応しく、白と金で配色された船は、豪華客船と呼んでも遜色ない程の大きさだった。
出港が夕方五時。
太平洋へと出て南下し、再び戻ってくるのが二日後の夕方五時。
パーティーは、毎晩七時からだそうだ。
「久間さん達は、まだのようだな」
「うん。
今受け付けが始まった所だしね。
近くで様子は見てると思うけど、入るのは、あの固まりが中へ入り終わる頃かな」
佐紀と並んで船からは見えない少し離れた場所で、神城一家を待つ間、ターナから貰った船の見取り図を確認していた。
「部屋は、VIPルームみたい。
まぁ、社長一家なら当然か。
あっ佐紀、一応こっちも覚えておいてくれる?」
部屋の見取り図とは違い、細かく線の入った回線や火器管制の書かれたものを手渡す。
「…細かいな…そう言えば船は初めてだ」
建物を制圧する事はよくある。
それとは違い、船は回線が密集していたりと、勝手が違う。
例えば、建物を爆破するのと、船を爆破するのとは違うように、逃げ道や核となる場所があるかないかでも変わってくる。
「万が一の時の為にも、頭に入れておいてね」
「わかった…」
不意に佐紀から視線を感じて顔を上げれば、バッチリ目が合った。
「どうかした?」
「いや…その服、よく似合っている」
「っありがとう。
新作なんだ。
でも、ちょっと色が濃いかな?」
「いいや、結には濃い青や赤が似合う。
この間の黒も良かったけどな」
「本当?」
「ああ、でも……あまり着ないピンクや淡い色のも今度着て見せて欲しいな」
「ふふっ良いよ。
なら、パーティードレスを楽しみにしてて」
「っ…わかった」
照れながらも、然り気無く抱き寄せる佐紀に甘えるように寄り添って、微笑み合う。
そこに、嬉しそうな声が聞こえてきた。
「っおねぇちゃんっキレイっっっ」
その声は、えらくハイテンションな妹だった。
「美輝もよく似合ってるよ」
「えへへっ……あのっ佐紀おにぃさんですか?」
「ああ、初めまして。
君が美輝ちゃんだね?
瀬能佐紀です。
よろしく」
「っこちらこそっ。
っおねぇちゃんをよろしくお願いしますっ」
気合いが入ってるなぁ…。
「美輝、他の人は?」
「もうすぐ来るよっ。
私は…おねぇちゃんを見付けて、走って来ちゃったから…」
「?どっから?」
「あっちの公園の所」
かなり距離があると思うのだけれど…?
「美輝ちゃんは、目が良いんだね」
「はいっ。
両目とも二、0余裕でありますっ」
今時珍しい子だ。
そんな話をしていれば、駐車場の方から、母達が歩いてくるのが見えた。
「っやあっ瀬能くんっ。
久し振りだねぇ」
「お久しぶりです神城さん」
「ああ、君が結華ちゃんの恋人とはっ。
運命を感じるよっ」
「…親父…本当に佐紀さんがお気に入りなんだな…」
「ふんっお前も水くさいっ。
なぜ早くシャドーの社員だと言わなかったっ?
瀬能くんと一緒に指名できたのにっ」
「…それが嫌だから、親父には言いたくなかったんだよ…佐紀さんと比べられたら堪らない…」
嬉しそうな明人さんと違い、刹那は今日もかなり落ち込んでいるようだ。
「刹那、シャキッとしてね。
仕事だと思って掛からないと駄目だよ?」
「はいっ」
「刹那は、その時になったらちゃんとするさ。
だよな?」
「はいっ、お任せくださいっ」
「佐紀は甘やかし過ぎだよ。
油断は禁物。
いくら与一達がいても、神族関係の事態になったら、頼れないからね」
「分かっているよ。
だが結は、もう少し俺を頼ってくれ」
「?当たり前でしょ?
佐紀はいつでもあてにしてる」
「そうか。
ならいい」
「……俺も頑張りますますっ」
刹那が若干泣きそうなのは、なぜだろう…。