月陰伝(一)
与一が半ば強引に引きずってきた三人は、見事にハイ状態になっていた。
中でも一番若い一人は、目がいっちゃっている。
魔術を使って一度眠らせ、解毒に掛かる。
「すごいね。
こんな事も魔術?でできるの?」
「うん。
こう言うのは、本当は佐紀の方が得意なんだけどね」
佐紀は、与一に連れられて、彼らの部屋に向かった。
「佐紀おにぃさんも色々できるの?」
「瀬能くんって、もしかして人間じゃないとか?」
処置の終わった三人を床に寝かせたまま、改めて雪仁とお茶を淹れていれば、気になっていたのだろう。
佐紀がこの場にいないからか、明人が訊ねた。
「今更隠す事でもないので言いますが…。
佐紀は父親が魔族で、母親が魔女です。
魔族由来の強い魔力と、魔女譲りの高い制御能力を持っています。
発動した魔力を打ち消したり、繊細な治療術とかが得意ですね」
「…魔族と魔女!?」
母と明人さんが驚いている。
無理もない。
両方とも、”魔”が付く。
良いイメージを持てないだろう。
「魔族といっても、人よりも少し寿命が長くて、魔力が強いってだけですよ。
魔女と言うのも、元は人です。
良いイメージじゃないかもしれませんが…。私達が魔女と呼ぶ者は、世界の守護者という役割を持った者達の事です。
この世界が、何事もなくあるのは、魔女達のお陰なんですよ?」
「守護者?」
「ええ、私たちの世界は、様々にある次元の一つにしか過ぎません。
その他の次元には、高度に発達した文明を持つ世界や、魔術が主体となる世界、魔界や冥界、神界や妖精界などがあります。
それぞれの世界の秩序を守る為、その次元に力でもって干渉しようとする者を、結界によって遮断しているのです」
境界線で区切られた結界は、その世界の秩序を乱す者を阻む。
来訪者達の魂を見極めるのだ。
魔女達の赦しなく、何者も入る事はできない。
「なるほどね。
なら、魔王とかが来て、世界を滅ぼすってのもあるかもしれないんだ?
その魔女達のお陰でないだけなんだね」
「そうです。
まぁ、魔王はそんな事考えてなかったので、今も普通にこの次元で生活してますけどね…」
「え?!」
そんな驚きの中、佐紀と与一が帰ってきた。
「ったくよぉ…とんでもねぇ船だな…」
「何かあったの?」
「…爆弾があった。
解体して、海に棄ててきたが……まだあるかもしれない…。
この後はパーティーだ。
その時に抜け出して、船内を捜索してくるよ。
配線の見取り図をもう一度見せてくれ」
「うん」
ハンドバッグの底に隠してあった見取り図を手渡す。
「この船の配線図が入った見取り図。
与一も見ておいて。
ターナに無理言って、今朝調べてもらったんだ。
見取り図は送ったけど、こっちのは知らないでしょ?」
「おう。
まぁた…良く手に入れたなぁ…」
与一が広げた紙を感心しながら見ていると、刹那がそれを覗き込んだ。
「この赤とか黄色の印は何だ?」
「赤がこの船の心臓部。
黄色が次に大事な場所。
配線の元とかね。
だから、ここに爆弾なんか仕掛けられたらまずいよ。
気を付けてね」
「いやぁ……気を付けてって言われても、簡単なのなら解体できるけど……」
「大丈夫だ。
さっき見付けたのは、お前でも解体できるレベルだった」
「……普通は解体できねぇよ…。
相変わらず、無茶な教育してんなぁ…」
「刹那も、もう少し魔術のレベルが上がれば、魔術で物質解体できるのにね」
「そうだな」
佐紀と頷きあえば、刹那と与一は、なぜかげっそりとしていた。
中でも一番若い一人は、目がいっちゃっている。
魔術を使って一度眠らせ、解毒に掛かる。
「すごいね。
こんな事も魔術?でできるの?」
「うん。
こう言うのは、本当は佐紀の方が得意なんだけどね」
佐紀は、与一に連れられて、彼らの部屋に向かった。
「佐紀おにぃさんも色々できるの?」
「瀬能くんって、もしかして人間じゃないとか?」
処置の終わった三人を床に寝かせたまま、改めて雪仁とお茶を淹れていれば、気になっていたのだろう。
佐紀がこの場にいないからか、明人が訊ねた。
「今更隠す事でもないので言いますが…。
佐紀は父親が魔族で、母親が魔女です。
魔族由来の強い魔力と、魔女譲りの高い制御能力を持っています。
発動した魔力を打ち消したり、繊細な治療術とかが得意ですね」
「…魔族と魔女!?」
母と明人さんが驚いている。
無理もない。
両方とも、”魔”が付く。
良いイメージを持てないだろう。
「魔族といっても、人よりも少し寿命が長くて、魔力が強いってだけですよ。
魔女と言うのも、元は人です。
良いイメージじゃないかもしれませんが…。私達が魔女と呼ぶ者は、世界の守護者という役割を持った者達の事です。
この世界が、何事もなくあるのは、魔女達のお陰なんですよ?」
「守護者?」
「ええ、私たちの世界は、様々にある次元の一つにしか過ぎません。
その他の次元には、高度に発達した文明を持つ世界や、魔術が主体となる世界、魔界や冥界、神界や妖精界などがあります。
それぞれの世界の秩序を守る為、その次元に力でもって干渉しようとする者を、結界によって遮断しているのです」
境界線で区切られた結界は、その世界の秩序を乱す者を阻む。
来訪者達の魂を見極めるのだ。
魔女達の赦しなく、何者も入る事はできない。
「なるほどね。
なら、魔王とかが来て、世界を滅ぼすってのもあるかもしれないんだ?
その魔女達のお陰でないだけなんだね」
「そうです。
まぁ、魔王はそんな事考えてなかったので、今も普通にこの次元で生活してますけどね…」
「え?!」
そんな驚きの中、佐紀と与一が帰ってきた。
「ったくよぉ…とんでもねぇ船だな…」
「何かあったの?」
「…爆弾があった。
解体して、海に棄ててきたが……まだあるかもしれない…。
この後はパーティーだ。
その時に抜け出して、船内を捜索してくるよ。
配線の見取り図をもう一度見せてくれ」
「うん」
ハンドバッグの底に隠してあった見取り図を手渡す。
「この船の配線図が入った見取り図。
与一も見ておいて。
ターナに無理言って、今朝調べてもらったんだ。
見取り図は送ったけど、こっちのは知らないでしょ?」
「おう。
まぁた…良く手に入れたなぁ…」
与一が広げた紙を感心しながら見ていると、刹那がそれを覗き込んだ。
「この赤とか黄色の印は何だ?」
「赤がこの船の心臓部。
黄色が次に大事な場所。
配線の元とかね。
だから、ここに爆弾なんか仕掛けられたらまずいよ。
気を付けてね」
「いやぁ……気を付けてって言われても、簡単なのなら解体できるけど……」
「大丈夫だ。
さっき見付けたのは、お前でも解体できるレベルだった」
「……普通は解体できねぇよ…。
相変わらず、無茶な教育してんなぁ…」
「刹那も、もう少し魔術のレベルが上がれば、魔術で物質解体できるのにね」
「そうだな」
佐紀と頷きあえば、刹那と与一は、なぜかげっそりとしていた。