月陰伝(一)
会場を出て、久間さん達と別れてから、真っ先に核となるエンジンルームへと向かった。
配線図にあった、赤い印の場所だ。
案の定、爆発物が仕掛けられていた。
だが、理解できない。
「何が目的だ?」
先程から船が揺れる。
ここに向かう途中、雷雲が見えた。
じきに嵐に巻き込まれるだろう。
そんな中、爆破などすれば、全員ただでは済まない。
解体作業を始めながら、結に連絡を取る。
『佐紀?』
「結、まずいぞっ。
嵐が来るっ。
それと、エンジン部分に爆弾がっ……っ」
そちらに目がいったのは偶然だった。
小さな爆弾が、柱に取り付けられており、それが、今まさに爆発し、光を発するところだった。
『っ佐紀っ!?』
とっさに爆発ごと結界で覆い、その部分の時間を止める事で、周囲への被害を留めた。
時間を巻き戻し、爆発する前の状態に戻して素早く解体する。
ほっと息をつき、結に伝える。
「っ……大丈夫だ。
だが、すまん…しばらく手を離せそうにない」
爆弾は、まだまだありそうだ。
『無事ならいいよ。
怪我はない?』
そんな言葉を嬉しく思いながらも、気を引きしめる。
「ああ、こちらは何とかする。
結も気を付けろよ。
何を仕掛けてくるかわからない」
『うん。
後で雷光を送る。
爆弾だけは何とかして』
雷光が来るならば、発見も早く、確実になるだろう。
ただ、結の方の守りが手薄になるのが気になるのだが、こちらを早く終わらせれば問題はない。
『わかった』
通信を切り、しばらくすると、人の気配が近付いてきた。
「貴様、何をしている!?」
誰何の声に、目を向ければ、男がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「貴様っ、我らの崇高な計画の邪魔をしたなっ!?
許さんっ!」
怒りに満ちた表情をして突進してくるが、それよりも早く向かって来るものの気配を感じ、肩の力を抜く。
《ガルラァァ》
「ッッアッ」
光が走ったと思った瞬間、それは、男を押し倒した。
《グルルルルっ》
「っはっうっ…ッ」
ほっとすると同時に、釘はさしておく。
「気絶させないでくれよ?
彼には、色々と聞きたい事がある」
《それは、この男によるのではないか?》
「そうだな。
すまないな、君。
今、手が離せないんだ。
大人しくしていてくれれば、彼は何もしない」
「っはっはいっ」
《…姫には、邪魔する者は蹴散らせとの命を受けたのだが?》
「もう、邪魔していないだろ?」
《うむ……お前もそのように首を激しく振らんでもよい…。
もう理解した、大人しくしておれ》
背中を向けているので分からないが、どうやら、男は肯定の為に無言で首を縦に振っているらしい。
確かに、大の男が座った時と同じ大きさの白い虎は、恐ろしいかもしれない。
「結の方は大丈夫か?」
《人質となられた者は、見つけたようだ。
だが、近くによくない波動を感じる…》
「良くない波動?」
《恐らく、人を害するものだ》
「まさか、神族の…大陸に現れた魔具と同じ物か?」
《実際にあちらの現物を見ておらんので、我は断定はできぬが……恐らく同質の物だ》
それでは結が危ない。
解体作業を終了し、男に掴み掛かる。
「他にも爆弾を仕掛けた場所があるはずだ。
案内しろ」
「っひっはっはいっっっ!」
《気を付けられよ。
こやつは、目的の為ならば、邪魔者は遠慮なく消すのでな。
役に立たぬと判断されれば終いだ》
当たり前だ。
即刻終わらせて、早く結の元へ帰らなければならないのだから。
配線図にあった、赤い印の場所だ。
案の定、爆発物が仕掛けられていた。
だが、理解できない。
「何が目的だ?」
先程から船が揺れる。
ここに向かう途中、雷雲が見えた。
じきに嵐に巻き込まれるだろう。
そんな中、爆破などすれば、全員ただでは済まない。
解体作業を始めながら、結に連絡を取る。
『佐紀?』
「結、まずいぞっ。
嵐が来るっ。
それと、エンジン部分に爆弾がっ……っ」
そちらに目がいったのは偶然だった。
小さな爆弾が、柱に取り付けられており、それが、今まさに爆発し、光を発するところだった。
『っ佐紀っ!?』
とっさに爆発ごと結界で覆い、その部分の時間を止める事で、周囲への被害を留めた。
時間を巻き戻し、爆発する前の状態に戻して素早く解体する。
ほっと息をつき、結に伝える。
「っ……大丈夫だ。
だが、すまん…しばらく手を離せそうにない」
爆弾は、まだまだありそうだ。
『無事ならいいよ。
怪我はない?』
そんな言葉を嬉しく思いながらも、気を引きしめる。
「ああ、こちらは何とかする。
結も気を付けろよ。
何を仕掛けてくるかわからない」
『うん。
後で雷光を送る。
爆弾だけは何とかして』
雷光が来るならば、発見も早く、確実になるだろう。
ただ、結の方の守りが手薄になるのが気になるのだが、こちらを早く終わらせれば問題はない。
『わかった』
通信を切り、しばらくすると、人の気配が近付いてきた。
「貴様、何をしている!?」
誰何の声に、目を向ければ、男がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「貴様っ、我らの崇高な計画の邪魔をしたなっ!?
許さんっ!」
怒りに満ちた表情をして突進してくるが、それよりも早く向かって来るものの気配を感じ、肩の力を抜く。
《ガルラァァ》
「ッッアッ」
光が走ったと思った瞬間、それは、男を押し倒した。
《グルルルルっ》
「っはっうっ…ッ」
ほっとすると同時に、釘はさしておく。
「気絶させないでくれよ?
彼には、色々と聞きたい事がある」
《それは、この男によるのではないか?》
「そうだな。
すまないな、君。
今、手が離せないんだ。
大人しくしていてくれれば、彼は何もしない」
「っはっはいっ」
《…姫には、邪魔する者は蹴散らせとの命を受けたのだが?》
「もう、邪魔していないだろ?」
《うむ……お前もそのように首を激しく振らんでもよい…。
もう理解した、大人しくしておれ》
背中を向けているので分からないが、どうやら、男は肯定の為に無言で首を縦に振っているらしい。
確かに、大の男が座った時と同じ大きさの白い虎は、恐ろしいかもしれない。
「結の方は大丈夫か?」
《人質となられた者は、見つけたようだ。
だが、近くによくない波動を感じる…》
「良くない波動?」
《恐らく、人を害するものだ》
「まさか、神族の…大陸に現れた魔具と同じ物か?」
《実際にあちらの現物を見ておらんので、我は断定はできぬが……恐らく同質の物だ》
それでは結が危ない。
解体作業を終了し、男に掴み掛かる。
「他にも爆弾を仕掛けた場所があるはずだ。
案内しろ」
「っひっはっはいっっっ!」
《気を付けられよ。
こやつは、目的の為ならば、邪魔者は遠慮なく消すのでな。
役に立たぬと判断されれば終いだ》
当たり前だ。
即刻終わらせて、早く結の元へ帰らなければならないのだから。