月陰伝(一)
お母さんがロケットを開けたのを見て、私もそっと開けてみた。
そして、その写真に目を見開いた。
「っ…あ…」
「っ……これ…っ」
ほぼ同時に、お母さんからも声が漏れた。
皆がお母さんのロケットを覗き見るのを見て、私も覗き込んだ。
「あれ?」
「どうしたんだい?」
そう聞いてくる雪仁お兄さんにすぐには答えず、自分の手にあるロケットを確認する。
「私と違うんだ…。
これがお父さん?」
「ええ…っ。
そっちは違うの?」
「うんっ。
スッゴクきれいな…っおねぇちゃんの写真っ」
「「「うそっ!?」」」
そう言って一斉に私の持つロケットに皆の視線が集中した。
「すげぇ!!
っ良いなぁ…っ」
「うんっ、素晴らしいショットだ…」
「っ本当に綺麗ですね…」
「焼き増し出来ないんでしょうか…?」
「っ……こっちも欲しいわ…」
えへへっ。
スッゴイ得した気分っ。
「お〜い。
盛り上がってるところ悪いが…言っただろ?
それは、ただのロケットじゃない」
「?どう言う事?」
得意気な顔で、こちらに向かってきた煉夜様は、ロケットをいったん閉じるように言った。
「それは、現代の天才魔術師と、奇才の魔女が編み出した術式が組み込まれている。
一度、目を閉じて思い浮かべてみるといい。
瑞樹と、結華…それと自分達。
家族写真だ」
不思議に思いながらも、言われるままに従い、次にロケットを開けると、言葉を失った。
「っ……」
そこには、撮った覚えのない『家族写真』があった。
「これは…っ」
覗き込んだ晴海お兄さんが呟いた。
それに誘われるように、写真を見たお父さんが、疑問を口にした。
「っ…おかしくないかい?
瑞樹さんが亡くなったのは、かなり前だよね?
なのに、結華ちゃんや美輝ちゃんの姿は、今の年齢みたいだよ?」
そうなのだ。
そこには素敵な家族写真があった。
お父さんの姿は、先程お母さんのロケットにあったもの。
お父さんが生きていた時は、まだ私は幼かったはずなのだ。
「何で…?」
それに答えたのは、おねぇちゃんだった。
「それに掛かっている術式は、『世界の記憶』だから…」
「…世界の記憶…?」
おねぇちゃんにくっついている律くんが羨ましいと思ったが、気を取り直しておねぇちゃんの言葉に耳を傾ける。
「過去、現在、未来が存在するように、世界は全てを記憶してる。
その空間、次元に存在する全てで構成された一瞬を記憶し続ける事ができる。
それを利用して、現在における個の姿を映し出すように、複雑な術式を組んである。
写真と言うより、鏡かな…?
父さんの姿は、この世から消える前の物。
更新されないようにしてあるから」
そう聞いて、改めてロケットを見る。
「願った人の姿を映す?」
「そう。
けど、記録した人の分しか無理だよ。
そのロケットなら、父さんと母さんと美輝と私だけ」
それならと思い、再びロケットを閉じてお父さんだけを想って開けば、記憶にないあの優しい笑顔が見えた。
「理解できた?」
「うん…。
スッゴク素敵。
これをお父さんが?」
「私とシェリー様とで作った試作品を知ってたんだろうね。
シェリー様に頼んでたのかも」
「結華さん?
もしかしてこれは、結華さんが考案したのですか?」
「?そうですよ?」
「…マジかよ…」
…おねぇちゃん…スゴいを通り越して、怖いよ…。
「結は天才だからな。
私にも作れ」
「月陰の商業課に依頼すれば良いじゃん。
もう、正式に商品化されてるよ?」
「お前なら、まだアレンジできるだろ?」
「これの禁則事項を知ってるね…」
「おう。
お前の説明で、今さっき気付いた」
「…駄目だからね。
こればっかりは、冥界との取り決めがある」
「面倒な事だな」
「他人事みたいに言わない。
その代わり、個人のプロマイドが出来るようにしてみるよ…。
過去から五年周期くらいのベストショットを呼び出せるやつ」
「「「それ欲しいっ」」」
思わず全員が叫んだのは他でもなかった。
そして、その写真に目を見開いた。
「っ…あ…」
「っ……これ…っ」
ほぼ同時に、お母さんからも声が漏れた。
皆がお母さんのロケットを覗き見るのを見て、私も覗き込んだ。
「あれ?」
「どうしたんだい?」
そう聞いてくる雪仁お兄さんにすぐには答えず、自分の手にあるロケットを確認する。
「私と違うんだ…。
これがお父さん?」
「ええ…っ。
そっちは違うの?」
「うんっ。
スッゴクきれいな…っおねぇちゃんの写真っ」
「「「うそっ!?」」」
そう言って一斉に私の持つロケットに皆の視線が集中した。
「すげぇ!!
っ良いなぁ…っ」
「うんっ、素晴らしいショットだ…」
「っ本当に綺麗ですね…」
「焼き増し出来ないんでしょうか…?」
「っ……こっちも欲しいわ…」
えへへっ。
スッゴイ得した気分っ。
「お〜い。
盛り上がってるところ悪いが…言っただろ?
それは、ただのロケットじゃない」
「?どう言う事?」
得意気な顔で、こちらに向かってきた煉夜様は、ロケットをいったん閉じるように言った。
「それは、現代の天才魔術師と、奇才の魔女が編み出した術式が組み込まれている。
一度、目を閉じて思い浮かべてみるといい。
瑞樹と、結華…それと自分達。
家族写真だ」
不思議に思いながらも、言われるままに従い、次にロケットを開けると、言葉を失った。
「っ……」
そこには、撮った覚えのない『家族写真』があった。
「これは…っ」
覗き込んだ晴海お兄さんが呟いた。
それに誘われるように、写真を見たお父さんが、疑問を口にした。
「っ…おかしくないかい?
瑞樹さんが亡くなったのは、かなり前だよね?
なのに、結華ちゃんや美輝ちゃんの姿は、今の年齢みたいだよ?」
そうなのだ。
そこには素敵な家族写真があった。
お父さんの姿は、先程お母さんのロケットにあったもの。
お父さんが生きていた時は、まだ私は幼かったはずなのだ。
「何で…?」
それに答えたのは、おねぇちゃんだった。
「それに掛かっている術式は、『世界の記憶』だから…」
「…世界の記憶…?」
おねぇちゃんにくっついている律くんが羨ましいと思ったが、気を取り直しておねぇちゃんの言葉に耳を傾ける。
「過去、現在、未来が存在するように、世界は全てを記憶してる。
その空間、次元に存在する全てで構成された一瞬を記憶し続ける事ができる。
それを利用して、現在における個の姿を映し出すように、複雑な術式を組んである。
写真と言うより、鏡かな…?
父さんの姿は、この世から消える前の物。
更新されないようにしてあるから」
そう聞いて、改めてロケットを見る。
「願った人の姿を映す?」
「そう。
けど、記録した人の分しか無理だよ。
そのロケットなら、父さんと母さんと美輝と私だけ」
それならと思い、再びロケットを閉じてお父さんだけを想って開けば、記憶にないあの優しい笑顔が見えた。
「理解できた?」
「うん…。
スッゴク素敵。
これをお父さんが?」
「私とシェリー様とで作った試作品を知ってたんだろうね。
シェリー様に頼んでたのかも」
「結華さん?
もしかしてこれは、結華さんが考案したのですか?」
「?そうですよ?」
「…マジかよ…」
…おねぇちゃん…スゴいを通り越して、怖いよ…。
「結は天才だからな。
私にも作れ」
「月陰の商業課に依頼すれば良いじゃん。
もう、正式に商品化されてるよ?」
「お前なら、まだアレンジできるだろ?」
「これの禁則事項を知ってるね…」
「おう。
お前の説明で、今さっき気付いた」
「…駄目だからね。
こればっかりは、冥界との取り決めがある」
「面倒な事だな」
「他人事みたいに言わない。
その代わり、個人のプロマイドが出来るようにしてみるよ…。
過去から五年周期くらいのベストショットを呼び出せるやつ」
「「「それ欲しいっ」」」
思わず全員が叫んだのは他でもなかった。