月陰伝(一)
「お前、佐紀と何かあったのか?」
「っえっ?!」
久しぶりに出てきた学校。
本来の姿での初登校。
煉夜が予想した通りの反応の騒がしい学友達から逃れ、ここは本来、生徒立ち入り禁止の屋上。
勝手に作った小屋で、煉夜と二人、昼食をしながら優雅に過ごしていた。
”星花学園”
この学園は、少し変わった体制が売りだ。
巨大な校舎は、東西に伸び、両先端をL字に南側へと折れる。
それは広い運動場を抱き込む形。
上から見れば、まるでホチキスの針の様だ。
ここまで見れば、何の変哲もない普通の学校。
しかし、その真ん中を割るように縦に高い柵が設置されている。
門も、南側に二つ”正門”がある。
西側が『星松男子高校』
東側が『星桜女子高校』
一学年、二学年は、それぞれ男子校、女子校として別れて生活し、最終学年は校舎中央で共学体制がとられる。
体育祭や文化祭、入学式や卒業式の時には、中央の柵が取り除かれ、合同で行われる、風変わりな学校だ。
「まだ二年で良かったよな。
三年だったら、男どもが魅了されて、大変な事になるぞ」
「ならないよ」
どう言う目で私を見てるんだ。
そんな事になる訳ないだろ。
「煌夜様くらいのレベルならまだしも、私程度じゃ、そんな事にならないよ」
「母上か〜ぁ…けどな…お前ちゃんと鏡見ろよ。
レベル的には同じだぞ」
「どこがよっ。
あんなフェロモン全開じゃないでしょっ」
煉夜の母親である御影煌夜様は、表では企業トップクラスの『シャドー・カンパニー』の現社長だ。
どんな困難な契約も、その男顔負けの手腕と魅力で結んでしまうと言う。
そして、毎日ひっきりなしに貢ぎ物が贈られ、常に男を袖にしまくっている。
だがそんな中でも、取捨選択を間違う事なく、どんな時でも有利に立つべく、貰う物は遠慮なく貰い、相手の弱味は全て握る。
煌夜様曰く。
『表では私が世界のトップよっ。
誰であろうと、私の邪魔はさせないわ』
女王様とは、こう言う人を指すのだろう。
百人いたら、百人ともが虜になる。
そんな人と並べないで欲しい。
「お前は……こっち方面は本当に壊滅的だな…」
「…どの方面よ…」
「あぁ〜あれだっほらっ好意だ。
お前は、向けられる好意に鈍感なんだよ。
あれだろ?
どうせ、マリュヒャ様がお前を引き取るって時も、迷惑になるとか、重荷になるとかってぐちゃぐちゃ一人で悩んだだろ」
「っうっ…」
何で分かるのっ?!
「はぁぁ〜ぁ。
バカかっ。
マリュヒャ様はなぁっお前が可愛くて仕方ないんだっ。
あの人はな、夜陰にも月光にも、絶対に結に怪我をさせるなと、毎回うるさいほどの文書を送ってるぞ。
お前が怪我するような大事なんてないのになっ」
「はぁ!?」
「その上、お前が仕事で出ていっている時は、十分毎に情報部に連絡を入れる程の心配っぷりだ。
最近の情報部では、お前専用のモニター係りまで作って対応してるらしい」
何ですとっ!?
「な?
あんな親バカを感知できない程、お前は向けられる好意に鈍感なんだよ」
言い返せない…っ。
「っえっ?!」
久しぶりに出てきた学校。
本来の姿での初登校。
煉夜が予想した通りの反応の騒がしい学友達から逃れ、ここは本来、生徒立ち入り禁止の屋上。
勝手に作った小屋で、煉夜と二人、昼食をしながら優雅に過ごしていた。
”星花学園”
この学園は、少し変わった体制が売りだ。
巨大な校舎は、東西に伸び、両先端をL字に南側へと折れる。
それは広い運動場を抱き込む形。
上から見れば、まるでホチキスの針の様だ。
ここまで見れば、何の変哲もない普通の学校。
しかし、その真ん中を割るように縦に高い柵が設置されている。
門も、南側に二つ”正門”がある。
西側が『星松男子高校』
東側が『星桜女子高校』
一学年、二学年は、それぞれ男子校、女子校として別れて生活し、最終学年は校舎中央で共学体制がとられる。
体育祭や文化祭、入学式や卒業式の時には、中央の柵が取り除かれ、合同で行われる、風変わりな学校だ。
「まだ二年で良かったよな。
三年だったら、男どもが魅了されて、大変な事になるぞ」
「ならないよ」
どう言う目で私を見てるんだ。
そんな事になる訳ないだろ。
「煌夜様くらいのレベルならまだしも、私程度じゃ、そんな事にならないよ」
「母上か〜ぁ…けどな…お前ちゃんと鏡見ろよ。
レベル的には同じだぞ」
「どこがよっ。
あんなフェロモン全開じゃないでしょっ」
煉夜の母親である御影煌夜様は、表では企業トップクラスの『シャドー・カンパニー』の現社長だ。
どんな困難な契約も、その男顔負けの手腕と魅力で結んでしまうと言う。
そして、毎日ひっきりなしに貢ぎ物が贈られ、常に男を袖にしまくっている。
だがそんな中でも、取捨選択を間違う事なく、どんな時でも有利に立つべく、貰う物は遠慮なく貰い、相手の弱味は全て握る。
煌夜様曰く。
『表では私が世界のトップよっ。
誰であろうと、私の邪魔はさせないわ』
女王様とは、こう言う人を指すのだろう。
百人いたら、百人ともが虜になる。
そんな人と並べないで欲しい。
「お前は……こっち方面は本当に壊滅的だな…」
「…どの方面よ…」
「あぁ〜あれだっほらっ好意だ。
お前は、向けられる好意に鈍感なんだよ。
あれだろ?
どうせ、マリュヒャ様がお前を引き取るって時も、迷惑になるとか、重荷になるとかってぐちゃぐちゃ一人で悩んだだろ」
「っうっ…」
何で分かるのっ?!
「はぁぁ〜ぁ。
バカかっ。
マリュヒャ様はなぁっお前が可愛くて仕方ないんだっ。
あの人はな、夜陰にも月光にも、絶対に結に怪我をさせるなと、毎回うるさいほどの文書を送ってるぞ。
お前が怪我するような大事なんてないのになっ」
「はぁ!?」
「その上、お前が仕事で出ていっている時は、十分毎に情報部に連絡を入れる程の心配っぷりだ。
最近の情報部では、お前専用のモニター係りまで作って対応してるらしい」
何ですとっ!?
「な?
あんな親バカを感知できない程、お前は向けられる好意に鈍感なんだよ」
言い返せない…っ。