月陰伝(一)
学校が終わり、いつも通り気配を消して裏庭へと向かう。
そこでは、煉夜が待っていた。
「結、一緒に頼む」
「いいよ」
不可視の魔術をかけ、煉夜と手を繋ぐ。
軽く飛び上がると、そのまま一緒に浮き上がり、屋上へと着地する。
「ははっ、いつ体験しても楽しいなっ」
「のん気だなぁ」
転移魔術を発動させ、本部へ。
「ただいまっ今日は佐賀さんか」
「お帰りなさいませ、煉夜様。
結華様もお仕事ですか?」
「いや、今日は休み」
「そうですか。
あぁ、正式にファリア様の養女となられたとか。
よろしかったですね。
皆様とても喜んでおられますよ」
ん?
皆様?
「何で知ってるの?」
「そんな事、ここ数日のファリア様を見てれば分かるだろ。
お前の事で良いことがあったって公言して歩いてるようなもんだぞ。
なぁ?」
「ええ。
それはもう、お仕事の方も絶好調で、近年まれに見る処理速度だと、側近の方達が、てんてこ舞いで…」
「…でも私が養女になったって話は…どこから…?」
「それは、マーチス様がお戻りになり、すぐに様子のおかしいファリア様を問い詰められまして。
あっと言う間に…。
それを情報部が大々的に公開したものですから、もう知らない者はないかと……結華様?」
ヒューっ何て事を!!
「はっはっはっ、素晴らしい!
もういっその事、一席設けようっ。
”祝・ファリア家公女誕生”ってどうだ?」
「吊るすっ!!」
「おおっ、良しッ。
横断幕を用意してやるっ」
「…煉夜様、煉夜様、話が噛み合っておられません。
今日の所は、もうお仕事に行かれては?」
「おっと。
そうだな。
ジジィにまたブツクサ言われてはたまらん。
ではな、結っ」
コイツは……分かってやってんのか…?。
「結華様……大丈夫でございますか?」
「…うん…ありがと…もう行くね……」
「はい、行ってらっしゃいませ」
少々気落ちしながら、屋敷へと戻り、服を着替える。
律は昼寝中のようだし、何をしようかと考えていれば、ケイタイの着信メールを知らせる黄色いライトが点滅しているのに気が付いた。
―――――――――――――――
件:結ちゃんヘルプっ
コンペに間に合わないよ〜。
助けて〜。
桂
―――――――――――――――
「………」
そっか…国際フォーラムとか言うやつ…この時期だったよね…。
―――――――――――――――
件:今から行きます。
いつも通り、着いたら電話しますね。
結
―――――――――――――――
これで良し。
「おや、お出掛けでございますか?」
「うん。
桂教授に呼び出された…。
今日中に帰れそうになければ、電話します…」
「そうしてください。
旦那様も心配なさるでしょうから」
「……あぁ…そう言えば…私専用と言うか…マリュー様専用の情報部のモニター係りがいると聞いたんですけど…サリーさん知ってます?」
「はい。
もちろんでございます」
もちろんなんだ…。
「…なくせませんかね…」
「無理ですな」
やっぱり…?
「お嬢様。
これは”愛”でございます。
受け止められませ」
「……いってきます……」
そこでは、煉夜が待っていた。
「結、一緒に頼む」
「いいよ」
不可視の魔術をかけ、煉夜と手を繋ぐ。
軽く飛び上がると、そのまま一緒に浮き上がり、屋上へと着地する。
「ははっ、いつ体験しても楽しいなっ」
「のん気だなぁ」
転移魔術を発動させ、本部へ。
「ただいまっ今日は佐賀さんか」
「お帰りなさいませ、煉夜様。
結華様もお仕事ですか?」
「いや、今日は休み」
「そうですか。
あぁ、正式にファリア様の養女となられたとか。
よろしかったですね。
皆様とても喜んでおられますよ」
ん?
皆様?
「何で知ってるの?」
「そんな事、ここ数日のファリア様を見てれば分かるだろ。
お前の事で良いことがあったって公言して歩いてるようなもんだぞ。
なぁ?」
「ええ。
それはもう、お仕事の方も絶好調で、近年まれに見る処理速度だと、側近の方達が、てんてこ舞いで…」
「…でも私が養女になったって話は…どこから…?」
「それは、マーチス様がお戻りになり、すぐに様子のおかしいファリア様を問い詰められまして。
あっと言う間に…。
それを情報部が大々的に公開したものですから、もう知らない者はないかと……結華様?」
ヒューっ何て事を!!
「はっはっはっ、素晴らしい!
もういっその事、一席設けようっ。
”祝・ファリア家公女誕生”ってどうだ?」
「吊るすっ!!」
「おおっ、良しッ。
横断幕を用意してやるっ」
「…煉夜様、煉夜様、話が噛み合っておられません。
今日の所は、もうお仕事に行かれては?」
「おっと。
そうだな。
ジジィにまたブツクサ言われてはたまらん。
ではな、結っ」
コイツは……分かってやってんのか…?。
「結華様……大丈夫でございますか?」
「…うん…ありがと…もう行くね……」
「はい、行ってらっしゃいませ」
少々気落ちしながら、屋敷へと戻り、服を着替える。
律は昼寝中のようだし、何をしようかと考えていれば、ケイタイの着信メールを知らせる黄色いライトが点滅しているのに気が付いた。
―――――――――――――――
件:結ちゃんヘルプっ
コンペに間に合わないよ〜。
助けて〜。
桂
―――――――――――――――
「………」
そっか…国際フォーラムとか言うやつ…この時期だったよね…。
―――――――――――――――
件:今から行きます。
いつも通り、着いたら電話しますね。
結
―――――――――――――――
これで良し。
「おや、お出掛けでございますか?」
「うん。
桂教授に呼び出された…。
今日中に帰れそうになければ、電話します…」
「そうしてください。
旦那様も心配なさるでしょうから」
「……あぁ…そう言えば…私専用と言うか…マリュー様専用の情報部のモニター係りがいると聞いたんですけど…サリーさん知ってます?」
「はい。
もちろんでございます」
もちろんなんだ…。
「…なくせませんかね…」
「無理ですな」
やっぱり…?
「お嬢様。
これは”愛”でございます。
受け止められませ」
「……いってきます……」