月陰伝(一)
こう言うのはやっぱり楽しい。
だらしなくニヤケてしまわないようにしなくては。
「先ず一つ。
世の中には君達より強い人間がたっくさんいるって事」
「っ…何言って…」
「二つ目はっ…っ」
少し身を沈めて、中央の子の腹に右下から拳を叩き込み、次に右足で一人を吹き飛ばし、戻した足の反動を利用して、また一人投げ飛ばす。
残った二人にもすかさず、一人を殴り飛ばし、最後は蹴り飛ばした。
カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、カシャンっと五人ともが五メートル程先のフェンスに叩きつけられたのは、一瞬だった。
そして、手をはたきながら、先程同様、にっこり笑んで、続ける。
「…っと、殴られたり蹴られると誰でも痛い。
痛いの嫌でしょう?
『自分がやられて嫌な事は、他人にしちゃいけませんっ』て教わらなかった?
やるなら、やられる覚悟をしなさい」
「うっうっ…」
「っく…っ」
呻く彼らが、ゆっくりと怯えた目を向けるのを待って、先程回収した物を見せる。
「そして三つ目…自分の物を盗られたら、悔しい」
「「「「「っあっ…っ」」」」」
驚愕する彼らに見せるつける様に、トランプのごとく広げて持つ。
右手に生徒手帳。
左手にお財布。
お財布を腕に抱えるように持ちかえ、生徒手帳を開いて中を見る。
「ふぅん、高三?
こんな事してて、次の進路大丈夫?
自覚した方が良いよ?
今不景気だし、ゆとり世代は警戒されてるから、汚点が一つでも見つかるとアウトだ」
学校の名前と、それぞれの名前と顔を記憶して、後ろを振り返る。
「大丈夫?
正義の味方も良いけど、こう毎回怪我してちゃ、いらん心配を掛けるよ?」
生徒手帳をポッケに入れ、手を差し出す。
素直に取った手を引っ張って立たせてやると、自分で制服についた土をはたき落とし、こちらに改めて目を向けてきた。
「…ありがとよっ……ユイ姉…」
「ふふっ、動ける?
これ、あの人に返してきてくれる?」
ついでのように腕に掛かっている白いハンドバッグと、少し離れた場所で放心している女の人を目で指した。
頷いて、バックを受けとり、女の人に駆けよっていくのを確認して、フェンスを飛び越える時に落下させた鞄を取りに行く。
屈んで手を伸ばした時、こちらに向かってくる雪仁と目が合った。
笑って肩をすくませて見せると、急いで入り口へと回り込んで行った。
既にパンパンになっている鞄に、抱えていた財布をゴロゴロとのせ入れ、動けずにいる五人の不良くん達の前に立つ。
「生徒手帳と財布は、駅前の交番に預けるから、ここでよっく反省したら取りに行きなさい。
お説教覚悟でね。
夜の七時までに取りに来なかったら、学校とお家に連絡してもらうから、そうなったら、保護者同伴でしか受けとれないようにしておくよ。
分かったね」
だらしなくニヤケてしまわないようにしなくては。
「先ず一つ。
世の中には君達より強い人間がたっくさんいるって事」
「っ…何言って…」
「二つ目はっ…っ」
少し身を沈めて、中央の子の腹に右下から拳を叩き込み、次に右足で一人を吹き飛ばし、戻した足の反動を利用して、また一人投げ飛ばす。
残った二人にもすかさず、一人を殴り飛ばし、最後は蹴り飛ばした。
カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、カシャンっと五人ともが五メートル程先のフェンスに叩きつけられたのは、一瞬だった。
そして、手をはたきながら、先程同様、にっこり笑んで、続ける。
「…っと、殴られたり蹴られると誰でも痛い。
痛いの嫌でしょう?
『自分がやられて嫌な事は、他人にしちゃいけませんっ』て教わらなかった?
やるなら、やられる覚悟をしなさい」
「うっうっ…」
「っく…っ」
呻く彼らが、ゆっくりと怯えた目を向けるのを待って、先程回収した物を見せる。
「そして三つ目…自分の物を盗られたら、悔しい」
「「「「「っあっ…っ」」」」」
驚愕する彼らに見せるつける様に、トランプのごとく広げて持つ。
右手に生徒手帳。
左手にお財布。
お財布を腕に抱えるように持ちかえ、生徒手帳を開いて中を見る。
「ふぅん、高三?
こんな事してて、次の進路大丈夫?
自覚した方が良いよ?
今不景気だし、ゆとり世代は警戒されてるから、汚点が一つでも見つかるとアウトだ」
学校の名前と、それぞれの名前と顔を記憶して、後ろを振り返る。
「大丈夫?
正義の味方も良いけど、こう毎回怪我してちゃ、いらん心配を掛けるよ?」
生徒手帳をポッケに入れ、手を差し出す。
素直に取った手を引っ張って立たせてやると、自分で制服についた土をはたき落とし、こちらに改めて目を向けてきた。
「…ありがとよっ……ユイ姉…」
「ふふっ、動ける?
これ、あの人に返してきてくれる?」
ついでのように腕に掛かっている白いハンドバッグと、少し離れた場所で放心している女の人を目で指した。
頷いて、バックを受けとり、女の人に駆けよっていくのを確認して、フェンスを飛び越える時に落下させた鞄を取りに行く。
屈んで手を伸ばした時、こちらに向かってくる雪仁と目が合った。
笑って肩をすくませて見せると、急いで入り口へと回り込んで行った。
既にパンパンになっている鞄に、抱えていた財布をゴロゴロとのせ入れ、動けずにいる五人の不良くん達の前に立つ。
「生徒手帳と財布は、駅前の交番に預けるから、ここでよっく反省したら取りに行きなさい。
お説教覚悟でね。
夜の七時までに取りに来なかったら、学校とお家に連絡してもらうから、そうなったら、保護者同伴でしか受けとれないようにしておくよ。
分かったね」