月陰伝(一)
第五章〜日常と母の行動〜
「ようやく付き合う事になったかぁ。
でも、マリュヒャ様が反対しなくて良かったなっ」
学校の屋上。
煉夜に昨日の報告をしていた。
「でも最初、すごい勢いで『断るっ』って言ったけど?」
「はははっ、それはようやく手元に引き取る事ができた娘を早々に奪われると思ったんだろうなっ。
最初の『結婚』しか聞こえてなかったんじゃないか?
”結婚”=”嫁ぐ”=”娘が出てく”と変換されたんだろ」
なるほど。
だからサリーにああ言われて納得したのか。
「フィル様から昔聞いたんだが、マリュヒャ様がシェリファ様と結婚すると報告に行った時、シェリファ様のお父上がおっしゃったのが、『娘と結婚するのは私が死んだ後にしろっ』だったそうだ」
何だそれっ。
でも確か……シェリー様が昔……。
「そう言えば、『今日は結婚記念日なのよ◎』って言って連れていかれたのが、お墓だったな…」
そうだ。
そこで、『お父様の命日なのよね』と言われてびっくりしたのだ。
「そうだ。
遺言で『私の葬儀の代わりに娘の結婚式を挙げろ』とあったそうだ。
最期まで娘を傍に置きたかったんだな…。
もの凄い執着だ。
そんな人を知ってる人だぞ?
既に親バカなんだ。
間違っても『私が死んでから…』何て言わせないように頑張れっ」
どう頑張れと?
昨日の律の話だと、私が帰る日は、あの仕事中毒のマリュー様も帰ってくるらしいから、親バカはもう否定しないけど…。
「そう言えば、話は変わるが、お前の妹がさっき二年棟にいたぞ?
『おねぇちゃんを知りませんか?』って、通りかかった奴に聞いてたな。
誰もピンと来なかったみたいだが」
美輝が?
「面白かったぞ?
『”真白結華”なんですけど…』って聞いた途端、聞かれた奴ら、『っ知らないっ』って逃げてくんだ」
「は?何で?」
「そりゃぁお前、頭のおかしい一年生が、『あの人おねぇちゃんなんです』って言ってんだと思ったんだろうな。
お前に妹が居たなんて知られてなかったからな」
「まぁそうだけど…?」
「そんで、聞かれた奴らは、お前を守らなきゃと思ったんだろう」
「どうして?」
「っ知らんのか?!
私のより大規模なファンクラブができてんのに?!」
ファンクラブ?
知らないよっ!?
「何だ…本当に知らないのか?
一年生なんて全員がお前のクラブ会員だと言っても過言ではないぞ?
だいたい、そのナリで隣で噂になってないのが不思議だと思わなかったのか?」
「隣って…星松?」
「きっちり箝口令が敷かれてるぞ。
もの凄い団結力だ。
この星花自体がお前を守る要塞と言える」
そんな大袈裟な…。
「今、大袈裟だなとか思ったか?
既に教師ぐるみで動いてるぞ?
もうじき合同祭があるしな。
混乱を避ける為の対策が思案されている」
得意気な煉夜の顔を、呆然と見てしまったのは、この場合仕方がない事だった。
でも、マリュヒャ様が反対しなくて良かったなっ」
学校の屋上。
煉夜に昨日の報告をしていた。
「でも最初、すごい勢いで『断るっ』って言ったけど?」
「はははっ、それはようやく手元に引き取る事ができた娘を早々に奪われると思ったんだろうなっ。
最初の『結婚』しか聞こえてなかったんじゃないか?
”結婚”=”嫁ぐ”=”娘が出てく”と変換されたんだろ」
なるほど。
だからサリーにああ言われて納得したのか。
「フィル様から昔聞いたんだが、マリュヒャ様がシェリファ様と結婚すると報告に行った時、シェリファ様のお父上がおっしゃったのが、『娘と結婚するのは私が死んだ後にしろっ』だったそうだ」
何だそれっ。
でも確か……シェリー様が昔……。
「そう言えば、『今日は結婚記念日なのよ◎』って言って連れていかれたのが、お墓だったな…」
そうだ。
そこで、『お父様の命日なのよね』と言われてびっくりしたのだ。
「そうだ。
遺言で『私の葬儀の代わりに娘の結婚式を挙げろ』とあったそうだ。
最期まで娘を傍に置きたかったんだな…。
もの凄い執着だ。
そんな人を知ってる人だぞ?
既に親バカなんだ。
間違っても『私が死んでから…』何て言わせないように頑張れっ」
どう頑張れと?
昨日の律の話だと、私が帰る日は、あの仕事中毒のマリュー様も帰ってくるらしいから、親バカはもう否定しないけど…。
「そう言えば、話は変わるが、お前の妹がさっき二年棟にいたぞ?
『おねぇちゃんを知りませんか?』って、通りかかった奴に聞いてたな。
誰もピンと来なかったみたいだが」
美輝が?
「面白かったぞ?
『”真白結華”なんですけど…』って聞いた途端、聞かれた奴ら、『っ知らないっ』って逃げてくんだ」
「は?何で?」
「そりゃぁお前、頭のおかしい一年生が、『あの人おねぇちゃんなんです』って言ってんだと思ったんだろうな。
お前に妹が居たなんて知られてなかったからな」
「まぁそうだけど…?」
「そんで、聞かれた奴らは、お前を守らなきゃと思ったんだろう」
「どうして?」
「っ知らんのか?!
私のより大規模なファンクラブができてんのに?!」
ファンクラブ?
知らないよっ!?
「何だ…本当に知らないのか?
一年生なんて全員がお前のクラブ会員だと言っても過言ではないぞ?
だいたい、そのナリで隣で噂になってないのが不思議だと思わなかったのか?」
「隣って…星松?」
「きっちり箝口令が敷かれてるぞ。
もの凄い団結力だ。
この星花自体がお前を守る要塞と言える」
そんな大袈裟な…。
「今、大袈裟だなとか思ったか?
既に教師ぐるみで動いてるぞ?
もうじき合同祭があるしな。
混乱を避ける為の対策が思案されている」
得意気な煉夜の顔を、呆然と見てしまったのは、この場合仕方がない事だった。