月陰伝(一)
”月陰会”

それは、裏社会の調停者。

だが、呼び名や認識は、業界によって異なる。

”傭兵組織”
”裏の掃除屋”
”世界の守護者”
”異能者集団”
”次元の管理者”

そのどれもが”月陰”を表していた。

結成されたのは、今から約千五百年程前。

この世界で、知恵と意思を持つのは”人”だけではない。
『裏』で生きる事を選んだ種族が数多く存在している。
それとは別に、特殊な能力を持ち、”人”の枠から外されてしまう人間も存在する。
どちらも、迫害され行き場を失って細々と暮らすことを余儀なくされた者達だった。
そんな彼らを、保護または、監督する組織として創られたのが月陰の始まりだ。

当初からある事情により、本部は日本の山奥深くに置かれた。
創立者は七人。

”星影の魔女”サミュー・バルカン。
”水の民”ランドル・ジャズ・マイン。
”狼族”タリュス・ヴィスカイル。
”魔族”フィリアム・ディル・サジェス。
”龍族”マリュヒァ・リデ・ファリア。
”御影一族”御影善一郎、御影凛之助

それぞれの意思が一つとなって、”月陰会”が生まれた。

人との共存を根底に置き、主な活動としては、人に迫害されないように他種族を支援する事。
そして、世界に社会的地位を確保する為、表向きは傭兵組織として始動した。

現在は、その機動力と高い能力が評価され、各国の内情問題を解決する為の秘密組織と広く認知されている。
その為、十世紀前から、組織の効率化を図り、役割を大きく二つに分けた。

他種族や、能力持ちに関係する仕事を請け負う部署を…。
”夜陰”

国家の問題解決を仕事とする部署を…。
”月光”

それぞれに代表を置き、その上に総統を置いた。
現在の代表は…。

”夜陰”御影凛之助
”月光”フィリアム・ディル・サジェス
”月陰会総統”マリュヒァ・リデ・ファリア

月陰会は、種族、年齢に関係なく構成されているため、上は千才を軽く越える者から、下は十代に至るまで、幅広い年代層を抱えている。
今でも創立者七名の内、未だ四人は現役で活動しているのだ。

現在、表の部分も合わせ、総勢約二千の会員によって構成されている。

そんな”月陰会”の中には、総統預りの部署が存在する。
それが”特務隊”だ。
”夜陰”でも”月光”でもない。
いわゆる何でも屋。
総統である龍族のマリュヒァ・リデ・ファリアの直轄。
その隊長の座にあるのが、若干十七才の”精霊使い”真紅結華だった。


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