月陰伝(一)
第六章〜ブティック―艶―〜
「美輝?
出掛けるの?」
「うん。
お母さんは、お父さんとデートなんでしょ?
私もお兄さん達とデートしてくるぅ」
「あら。
わかったわ。
あんまり我が儘言わないのよ?」
「分かってるもんっ」
今日は休日。
母は父とデートだからと、朝から機嫌がいい。
「妃さん。
準備できたかい?」
「ええ」
「美輝ちゃんも行くかい?」
「ううん。
二人でデート楽しんで来て」
新婚の二人を邪魔する気はない。
それに、私にも大切な約束があるのだ。
「父さん、美輝ちゃんの事は心配いらないよ。
僕と刹那兄さんと夏樹で、買い物に出るから。
晴海兄さんは仕事?」
「いや、友達と出掛けるとか言ってたなぁ。
だがあれはデートだ。
晴海にしては、めかしこんでたからな」
「あの晴海兄さんが…?」
「相手どんな人なんだろ…?」
意外だ。
女性に興味がないんだと思ってた。
もの凄く真面目な人で、かなり几帳面。
いつも無表情で、取っ付きにくい。
失礼かもしれないが、友達もあまりいなさそうなのに、お付き合いしてる人がいるとは…。
「じゃぁ、行ってくるわね。
雪仁君、あんまり甘やかさなくていいからね」
「ははっ、大丈夫ですよ」
「だって、この前お洋服買ってくれたんでしょ?」
「っいえ、あれは友人が作った試作品なんですよ。
うちの大学の被服科の方から貰ったんです」
「まぁ、そうだったの?
すごく素敵だったわよ?」
「はい。
また美輝ちゃんに似合うのがあったら貰っておきますね」
誤魔化せて良かった。
あれは、おねぇちゃんがくれたんだもんね。
「ふふっありがとう。
じゃぁ、気をつけてね」
「はい。
お母さんも楽しんできてください」
「ええ」
いい笑顔だ。
こんなにお母さんが輝いてるのを初めて見た。
「雪、メールはするが、泊まりになるかもしれん。
戸締まりよろしくな」
「わかってるよ。
何なら二日でも三日でも好きにしてください」
「いいだろう。
家族が増えるのは嬉しいからな。
期待していなさい」
「っやだ、明人さんったら」
「…新婚ってこんな感じなんだ…」
あてられそうだ。
見てるこっちが恥ずかしい。
「父さん……女の子の前でやめてください…」
「おう。
では、行ってくる」
「「いってらっしゃい」」
両親の乗った車が遠のく音を聞きながら、雪仁と二人、盛大に溜め息をついた。
「やっと行きましたね」
「うん。
これで出掛けられるね」
若干疲れたような気がする。
「親父達は行ったのか?」
そこで、出掛ける準備を整えた刹那と夏樹が二階から下りてきた。
「行きました。
まったく、兄さんが長男なんですから、見送りくらいしてくださいよ」
「だってなぁ…あぁいう雰囲気苦手なんだよ。
ってかお前は最近、晴海みたいな事言うなぁ…」
「悪かったですね」
そう言われて、雪仁が微妙に落ち込んだ様に見えたのは気のせいではないかもしれない。
出掛けるの?」
「うん。
お母さんは、お父さんとデートなんでしょ?
私もお兄さん達とデートしてくるぅ」
「あら。
わかったわ。
あんまり我が儘言わないのよ?」
「分かってるもんっ」
今日は休日。
母は父とデートだからと、朝から機嫌がいい。
「妃さん。
準備できたかい?」
「ええ」
「美輝ちゃんも行くかい?」
「ううん。
二人でデート楽しんで来て」
新婚の二人を邪魔する気はない。
それに、私にも大切な約束があるのだ。
「父さん、美輝ちゃんの事は心配いらないよ。
僕と刹那兄さんと夏樹で、買い物に出るから。
晴海兄さんは仕事?」
「いや、友達と出掛けるとか言ってたなぁ。
だがあれはデートだ。
晴海にしては、めかしこんでたからな」
「あの晴海兄さんが…?」
「相手どんな人なんだろ…?」
意外だ。
女性に興味がないんだと思ってた。
もの凄く真面目な人で、かなり几帳面。
いつも無表情で、取っ付きにくい。
失礼かもしれないが、友達もあまりいなさそうなのに、お付き合いしてる人がいるとは…。
「じゃぁ、行ってくるわね。
雪仁君、あんまり甘やかさなくていいからね」
「ははっ、大丈夫ですよ」
「だって、この前お洋服買ってくれたんでしょ?」
「っいえ、あれは友人が作った試作品なんですよ。
うちの大学の被服科の方から貰ったんです」
「まぁ、そうだったの?
すごく素敵だったわよ?」
「はい。
また美輝ちゃんに似合うのがあったら貰っておきますね」
誤魔化せて良かった。
あれは、おねぇちゃんがくれたんだもんね。
「ふふっありがとう。
じゃぁ、気をつけてね」
「はい。
お母さんも楽しんできてください」
「ええ」
いい笑顔だ。
こんなにお母さんが輝いてるのを初めて見た。
「雪、メールはするが、泊まりになるかもしれん。
戸締まりよろしくな」
「わかってるよ。
何なら二日でも三日でも好きにしてください」
「いいだろう。
家族が増えるのは嬉しいからな。
期待していなさい」
「っやだ、明人さんったら」
「…新婚ってこんな感じなんだ…」
あてられそうだ。
見てるこっちが恥ずかしい。
「父さん……女の子の前でやめてください…」
「おう。
では、行ってくる」
「「いってらっしゃい」」
両親の乗った車が遠のく音を聞きながら、雪仁と二人、盛大に溜め息をついた。
「やっと行きましたね」
「うん。
これで出掛けられるね」
若干疲れたような気がする。
「親父達は行ったのか?」
そこで、出掛ける準備を整えた刹那と夏樹が二階から下りてきた。
「行きました。
まったく、兄さんが長男なんですから、見送りくらいしてくださいよ」
「だってなぁ…あぁいう雰囲気苦手なんだよ。
ってかお前は最近、晴海みたいな事言うなぁ…」
「悪かったですね」
そう言われて、雪仁が微妙に落ち込んだ様に見えたのは気のせいではないかもしれない。