月陰伝(一)
《律…眠れぬのか?》
「うぅっクロちゃんっ…っふっふぇっ」
《泣くでない。
姫も今日は傍に居ろう。
…熱があるのか?》
「昨日からずっとこの調子で寝てないからね。
少し冷やそうか」
《うむ。
律よ、泉を喚ぶからな。
大人しく眠るのだぞ》
「っふっ…センちゃん?」
姉が一つ息をつくと、目を閉じて呟いた。
「龍泉」
空中に突然水が湧き出し、水の球体ができる。
そしてその中から、にょきっと龍の頭が生えた。
「「「っ!?」」」
小さな龍は、その体が水球から出てくるのと比例して水の球は小さくなり、尻尾が出ると、それはなくなった。
ゆっくりと降下し、姉にしがみついている子どもを口先でつついた。
「っふっ…センちゃん…っ」
《りっちゃん、いっしょにおひるねしましょっ。
いいんでしゅよね?
ヒメしゃま?》
「うん。
お願いね」
《あいっ。
りっちゃん、おふとんは、ココでしゅよ》
「うっ…はい…っねぇさま…っ」
「ここに居るから。
ちゃんと寝なさい」
「っはい…っ」
男の子が大人しく布団にトテトテと歩いて行くと、黒狼が掛け布団をめくり、中に納まったのを確認すると、龍泉も手伝って布団を掛けた。
黒狼が横になると、龍泉は男の子の頭を囲うように横たわった。
程なく穏やかな寝息が聞こえてきた。
「眠ったか?」
「みたいだね」
姉と煉夜がほっと息をついた。
落ち着いた所で、気になっていることを聞いてみる事にした。
「おねぇちゃん、あの子誰?」
「うん?
律は、弟だよ。
血の上では従弟だけどね」
「従弟?!」
知らない。
むしろ、親族ってものに会った事がない。
母は駆け落ちだったらしく、親との交流がなかったし、父の事は何も知らなかった。
「父方の従弟でね。
両親はこの子が生まれてすぐに亡くなって、引き取られたんだ」
「…おねぇちゃんの…今のお父さんに…?」
どんな人なんだろう…。
死んだお父さんの友達だったって聞いたけど、友達だからって引き取るかな?
「マリュヒャ様は、素晴らしい人だよ」
そう言ったのは刹那お兄さんだった。
「マリュヒャ…?」
「マリュヒャ・リデ・ファリア。
かつて龍族の長をしてらした方だ」
「っ煉っ」
「ふんっ、今更だろ?
おい坊主、お前も今人外のものを見た。
どう思う」
「っどうって…?
何がなんだか…」
「夢か幻だと思わないのならば、問題はない。
今目の前にあることが真実だ。
信じられないと自分を疑うような小者になるな」
「っはっはいっ」
「煉…無茶苦茶だよ…。
ごめんね。
信じられないならそれで良いんだよ。
無理をするもんじゃない。
でも…こんな世界もあるんだって思ってくれると嬉しい」
「うん…でも俺、今スゴいワクワクしてる。
世界が広がった感じだっ」
そうだよね。
違う世界があったって感じだ。
凄くうれしくて、ワクワクするっ。
「はははっ、こいつら揃いも揃ってっ。
面白い奴らだっ」
「うぅっクロちゃんっ…っふっふぇっ」
《泣くでない。
姫も今日は傍に居ろう。
…熱があるのか?》
「昨日からずっとこの調子で寝てないからね。
少し冷やそうか」
《うむ。
律よ、泉を喚ぶからな。
大人しく眠るのだぞ》
「っふっ…センちゃん?」
姉が一つ息をつくと、目を閉じて呟いた。
「龍泉」
空中に突然水が湧き出し、水の球体ができる。
そしてその中から、にょきっと龍の頭が生えた。
「「「っ!?」」」
小さな龍は、その体が水球から出てくるのと比例して水の球は小さくなり、尻尾が出ると、それはなくなった。
ゆっくりと降下し、姉にしがみついている子どもを口先でつついた。
「っふっ…センちゃん…っ」
《りっちゃん、いっしょにおひるねしましょっ。
いいんでしゅよね?
ヒメしゃま?》
「うん。
お願いね」
《あいっ。
りっちゃん、おふとんは、ココでしゅよ》
「うっ…はい…っねぇさま…っ」
「ここに居るから。
ちゃんと寝なさい」
「っはい…っ」
男の子が大人しく布団にトテトテと歩いて行くと、黒狼が掛け布団をめくり、中に納まったのを確認すると、龍泉も手伝って布団を掛けた。
黒狼が横になると、龍泉は男の子の頭を囲うように横たわった。
程なく穏やかな寝息が聞こえてきた。
「眠ったか?」
「みたいだね」
姉と煉夜がほっと息をついた。
落ち着いた所で、気になっていることを聞いてみる事にした。
「おねぇちゃん、あの子誰?」
「うん?
律は、弟だよ。
血の上では従弟だけどね」
「従弟?!」
知らない。
むしろ、親族ってものに会った事がない。
母は駆け落ちだったらしく、親との交流がなかったし、父の事は何も知らなかった。
「父方の従弟でね。
両親はこの子が生まれてすぐに亡くなって、引き取られたんだ」
「…おねぇちゃんの…今のお父さんに…?」
どんな人なんだろう…。
死んだお父さんの友達だったって聞いたけど、友達だからって引き取るかな?
「マリュヒャ様は、素晴らしい人だよ」
そう言ったのは刹那お兄さんだった。
「マリュヒャ…?」
「マリュヒャ・リデ・ファリア。
かつて龍族の長をしてらした方だ」
「っ煉っ」
「ふんっ、今更だろ?
おい坊主、お前も今人外のものを見た。
どう思う」
「っどうって…?
何がなんだか…」
「夢か幻だと思わないのならば、問題はない。
今目の前にあることが真実だ。
信じられないと自分を疑うような小者になるな」
「っはっはいっ」
「煉…無茶苦茶だよ…。
ごめんね。
信じられないならそれで良いんだよ。
無理をするもんじゃない。
でも…こんな世界もあるんだって思ってくれると嬉しい」
「うん…でも俺、今スゴいワクワクしてる。
世界が広がった感じだっ」
そうだよね。
違う世界があったって感じだ。
凄くうれしくて、ワクワクするっ。
「はははっ、こいつら揃いも揃ってっ。
面白い奴らだっ」