月陰伝(一)
流石は刹那の兄弟だ。

「そんで?!
結姉の親父さんって龍なのかっ?!」

そこかっ。
何て順応性の高いやつだっ。

「何だ坊主。
見たいのか?」
「っ見たいっ。
龍ってドラゴンの方っ?
それとも、そこの龍みたいなやつ?」
「はははっどっちが良かったんだ?
ちなみに龍泉みたいな方だ。
まずその姿には、ならんがな。
なんせデカイ」
「へぇぇぇっ」

きらめいてるな…。

小さい子がヒーローものとか、ロボットに憧れるような目になっている。

「…そろそろ本題に入ってもいい?」

このままでは収拾がつかなくなりそうだった。

先ずは刹那と夏樹に母の外出の事を話した。
そして、早急に手を切るようにしたいと伝える。

「勿論だ。
そんなおかしな宗教団体になんて関わってるべきじゃない」
「でも、それって結姉に対してなんじゃねぇの?
確かにこんな力を持ってたらおかしいと思うかもしれないけど…分かってくれるんじゃねぇ?」
「結を怒らせた時、『化け物』と言った奴だ。
そう物分かりはよくないぞ?」
「っそんな事言ったのか?!」
「うん…言ったの…。
私もビックリしたけど…」
「まぁ、能力について自制心の強い結が、珍しく本気でキレてたからな。
佐紀が来なかったら、どうなってたか…」

失礼な。
確かにキレてたけど…。

「結ちゃんの力の事を、お母さんが受け止められなくても、僕達で根気強く説得しましょう。
それに、お母さんが、結ちゃんの力を”祓いたい”と思ってるって事は、結ちゃんを思ってるって事ではないかい?
”祓えない”ものだって理解させればいいんだよ」

私の事を思っているかどうかはともかく、この能力が取り憑いたとかじゃないと解らせればいいのは確かだ。

「なら、おねぇちゃんがお母さんと話す機会をつくればいいね。
お父さんにも、その場に居てもらえたらいいんだけど…」
「そうだね。
父さんが傍にいれば、違うかもしれない」
「親父さんは、こう言うの信じると思うか?」
「どうだろう…ちょっと探ってみるか」

そうして、数日後に神城家へと訪問する事が決まった。

「お茶でもどうだ?」

そう言ってリリィが色々と持ってきてくれたので、ティータイムとなった。

「そう言えば、おねぇちゃん。
あの人もリリィさんなの?」

今更な質問のように思うのは気のせいだろうか。

「あ〜ぁ説明が面倒だな……。
この前会ったリリィと同一人物だよ」

月陰の関係者としてただの人じゃないと言うのは簡単だが…。

「?だって…確かにこの前の女の人?は、男だって聞いたけど、違いすぎるよ?」
「美輝ちゃん、女の姿の時に会ったんだ?」
「うん?はい」

刹那もどう説明しようかと頭をかいた。
結果、うやむや作戦でいく事にしたようだ。

「簡単に言うと、そうゆう能力がリリィさんにはあって、変幻自在なんだ。
誰も本来の姿が分からない。
年齢もその日によって変わるから、気にしたらダメだ」
「っえ???」

煉夜もそのまま押し通す作戦き決めたらしい。

「そうだな。
リリィはリリィだ。
ただ、女の時はリリアーヌで、男の時はリリクサスって名前だぞ」
「「「………」」」

うん。
注意する点がそこってどうなの?


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