月陰伝(一)
『僕の結華に伝えておいてくれるかな?
僕の力が必要になったら、いつだって協力するよって。
これ、メルアドね』
『こんなもの、素直に渡すと思うのか?』
『どうだろう?
けど、僕の結華は、使える物は迷わず使うはずだ。
その為に備えは必要だと思うだろうね』
嫌な奴だが、私の事をよくわかっている。
確かに、紫藤の情報網は使える。
紫藤ならば、月陰でも知ることができない情報や伝を持っている。
『ふんっ良いだろう』
煉夜が、紫藤からメモを受け取った。
『じゃぁ、失礼するよ』
意外とあっさり去っていく紫藤に、少し拍子抜けしながらも水鏡を消滅させると、すぐに煉夜が戻ってきた。
「結っ、アイツはやはりやめておけっ」
開口一番、そう切り出した煉夜は、私の前にメモを放った。
「それは好きにしろ。
だが、アイツと取り引きする時はよく考えろよ」
「分かってるよ。
私があの男を苦手な事知ってるでしょ?
でも、無闇に味方にもしたくないけど、それ以上に敵にも回したくないんだよね…」
実力も折り紙つきだ。
敵に回せば、厄介な相手になる。
「おねぇちゃん…あの新堂奏司が嫌いだったの?
確かに何か…テレビとは違う雰囲気だったけど……」
「見た目に騙されるな。
どれ程大衆の前で取り繕っても、分かるやつには分かる匂いってのがある。
本来、人を人と思わない冷酷さと残忍さを持った悪魔だ」
確かに紫藤は、仕事でしくじった事はない。
どんな相手、どんな状況でも確実に仕留めると定評がある。
何の感情も抱かずに、仕事を遂行する凄腕だと、名が通っているのだ。
「それにしても、結ちゃんの事……何て言うか…」
言いづらそうにする雪仁に、煉夜が苛立ちながら言う。
「アイツは昔から、結に惚れてるんだ。
会えば必ず、付き合おう、結婚しようだのと口説くし、手を出そうとするっ。
全くっ、目障りな害虫だっ」
「害虫……」
雪仁が気の毒そうに呟く。
「ねぇさま、あのひとと、けっこんなんてしませんよね?」
泣きそうな顔で見上げてくる律の頭を撫でながら、苦笑する。
「しないよ。
律の兄様は、佐紀じゃ駄目かな?」
「っさきにぃさまですか!?
いいですよっ。
いつにぃさまになりますか!?」
「いや…いつって……」
佐紀になついているのは分かっていたけど、こんな切り返しは予想外だ。
「っやっぱり佐紀さんか……うん…そうだよな……」
「サキさんって誰?」
「仕事は出来るし、腕っぷしも強い。
いざと言うとき頼りになるし、血筋も問題ない上に、顔も良い。
結を一番に想って、想って、想い続ける一途な男だ。
ちょっと待ってろ……確か、この前写メに……っあったっ、これだっ」
「うわぁ、カッコいいっ!」
「この見た目で強いとか反則じゃね!?」
「おや、この人見たことありますよ?
確か、お父さんのお気に入りのシャドーの社員です」
「ああ、佐紀さんは、親父の会社によく呼ばれるな。
毎回、秘書になってくれと言われるって言ってた」
なんか佐紀の株が上がっていってる?
「「「「「それで?
いつ結婚するの(んだ)!?」」」」」
どうしてそうなるんだ!?
僕の力が必要になったら、いつだって協力するよって。
これ、メルアドね』
『こんなもの、素直に渡すと思うのか?』
『どうだろう?
けど、僕の結華は、使える物は迷わず使うはずだ。
その為に備えは必要だと思うだろうね』
嫌な奴だが、私の事をよくわかっている。
確かに、紫藤の情報網は使える。
紫藤ならば、月陰でも知ることができない情報や伝を持っている。
『ふんっ良いだろう』
煉夜が、紫藤からメモを受け取った。
『じゃぁ、失礼するよ』
意外とあっさり去っていく紫藤に、少し拍子抜けしながらも水鏡を消滅させると、すぐに煉夜が戻ってきた。
「結っ、アイツはやはりやめておけっ」
開口一番、そう切り出した煉夜は、私の前にメモを放った。
「それは好きにしろ。
だが、アイツと取り引きする時はよく考えろよ」
「分かってるよ。
私があの男を苦手な事知ってるでしょ?
でも、無闇に味方にもしたくないけど、それ以上に敵にも回したくないんだよね…」
実力も折り紙つきだ。
敵に回せば、厄介な相手になる。
「おねぇちゃん…あの新堂奏司が嫌いだったの?
確かに何か…テレビとは違う雰囲気だったけど……」
「見た目に騙されるな。
どれ程大衆の前で取り繕っても、分かるやつには分かる匂いってのがある。
本来、人を人と思わない冷酷さと残忍さを持った悪魔だ」
確かに紫藤は、仕事でしくじった事はない。
どんな相手、どんな状況でも確実に仕留めると定評がある。
何の感情も抱かずに、仕事を遂行する凄腕だと、名が通っているのだ。
「それにしても、結ちゃんの事……何て言うか…」
言いづらそうにする雪仁に、煉夜が苛立ちながら言う。
「アイツは昔から、結に惚れてるんだ。
会えば必ず、付き合おう、結婚しようだのと口説くし、手を出そうとするっ。
全くっ、目障りな害虫だっ」
「害虫……」
雪仁が気の毒そうに呟く。
「ねぇさま、あのひとと、けっこんなんてしませんよね?」
泣きそうな顔で見上げてくる律の頭を撫でながら、苦笑する。
「しないよ。
律の兄様は、佐紀じゃ駄目かな?」
「っさきにぃさまですか!?
いいですよっ。
いつにぃさまになりますか!?」
「いや…いつって……」
佐紀になついているのは分かっていたけど、こんな切り返しは予想外だ。
「っやっぱり佐紀さんか……うん…そうだよな……」
「サキさんって誰?」
「仕事は出来るし、腕っぷしも強い。
いざと言うとき頼りになるし、血筋も問題ない上に、顔も良い。
結を一番に想って、想って、想い続ける一途な男だ。
ちょっと待ってろ……確か、この前写メに……っあったっ、これだっ」
「うわぁ、カッコいいっ!」
「この見た目で強いとか反則じゃね!?」
「おや、この人見たことありますよ?
確か、お父さんのお気に入りのシャドーの社員です」
「ああ、佐紀さんは、親父の会社によく呼ばれるな。
毎回、秘書になってくれと言われるって言ってた」
なんか佐紀の株が上がっていってる?
「「「「「それで?
いつ結婚するの(んだ)!?」」」」」
どうしてそうなるんだ!?