月陰伝(一)
テスト週間が終わり、結果発表の時がやってきた。
結果は見るまでもない。
だが、発表の貼り紙の前を通過する手前で、難しい顔をした教師達に捕まった。
今いるのは、今まで一切縁のなかった”生徒指導室”である。
横には煉。
前には、ずらっと全教科担当の教師が並んでいた。
「呼んだ意味は分かっているな」
「さあ、どうでしょう」
こら煉、しれっと言うな。
「っ…君たち二人、今回のテストで見事満点を取った。
五教科すべて満点の五百点満点だ」
「でしょうね」
煉っっっ。
「っ…単刀直入に聞く。
何かしたのかね?」
「お話が見えませんが」
頼むよ〜煉…。
「っカンニングしたんじゃないのかっっ」
「最前列でできるとでも?
それでは余りにも監督不行き届き。
お粗末な見解ですね」
「ッ御影くんっそれは先生に失礼でしょう」
たまらず煉の担任が叫ぶのを聞いて、こちらもカチンときた。
「そちらが先に失礼な事を言ったのです。
何を根拠に言われているのか知りませんが、私たちを侮辱するのでしたら、その証拠を提示してしかるべきでしょう。
一方的にこちらに不正があったと言われるのは、人としても教師としても問題があると思いますが?」
「っ…」
黙ってしまった教師陣には悪いが、教師と生徒としての最低限の礼儀は守ってもらわなくては困る。
「確かに、真白の言う通りですよ、中条先生。
では改めて、なぜ今まで君たちが力を抜いていたのかを聞きたい」
「私たちは、決して力を抜いていたわけではありません。
今までの成績をご存知ですか?」
「ああ…私の担当の数学だけだが、今までの小テストを合わせた八回のテスト、真白は…七十三、七十五、七十八、七十五、七十、七十八、七十五、七十五。
御影は…七十五、七十八、七十四、七十三、七十八、七十四、七十五、七十五だな」
確認するようにこちらに目を向ける教師に頷く。
「率直に言って、全教科七十五点を取るように計算してテストを受けていたんです」
「っ?なぜそんな事を…っ」
「面白くないからだ」
「おっ面白くない…?」
煉…っ。
「はっきり言って、百点満点なんてものは、教科書を全て覚えていれば取れる」
「いや…確かにそうかもしれないが…」
「私らにとっては、今回のテストが手抜きみたいなものだ。
答えなんて全部解るんだから、配点を考えなくて良い分、楽だった。
だから、今回手を抜いた事は謝れても、今までのものが手抜きだったと言われるのは心外以外のなにものでもない」
はっきり言ったな…。
素に戻すと煉は大人に素っ気なくなるからな…。
教師陣の様子は…。
うわ〜ぁ、真っ青…。
「もう良いですか。
そろそろ始業の鐘がなるんで。
結」
「…うん」
少し同情しながら、潔い煉の背を追って部屋を出た。
結果は見るまでもない。
だが、発表の貼り紙の前を通過する手前で、難しい顔をした教師達に捕まった。
今いるのは、今まで一切縁のなかった”生徒指導室”である。
横には煉。
前には、ずらっと全教科担当の教師が並んでいた。
「呼んだ意味は分かっているな」
「さあ、どうでしょう」
こら煉、しれっと言うな。
「っ…君たち二人、今回のテストで見事満点を取った。
五教科すべて満点の五百点満点だ」
「でしょうね」
煉っっっ。
「っ…単刀直入に聞く。
何かしたのかね?」
「お話が見えませんが」
頼むよ〜煉…。
「っカンニングしたんじゃないのかっっ」
「最前列でできるとでも?
それでは余りにも監督不行き届き。
お粗末な見解ですね」
「ッ御影くんっそれは先生に失礼でしょう」
たまらず煉の担任が叫ぶのを聞いて、こちらもカチンときた。
「そちらが先に失礼な事を言ったのです。
何を根拠に言われているのか知りませんが、私たちを侮辱するのでしたら、その証拠を提示してしかるべきでしょう。
一方的にこちらに不正があったと言われるのは、人としても教師としても問題があると思いますが?」
「っ…」
黙ってしまった教師陣には悪いが、教師と生徒としての最低限の礼儀は守ってもらわなくては困る。
「確かに、真白の言う通りですよ、中条先生。
では改めて、なぜ今まで君たちが力を抜いていたのかを聞きたい」
「私たちは、決して力を抜いていたわけではありません。
今までの成績をご存知ですか?」
「ああ…私の担当の数学だけだが、今までの小テストを合わせた八回のテスト、真白は…七十三、七十五、七十八、七十五、七十、七十八、七十五、七十五。
御影は…七十五、七十八、七十四、七十三、七十八、七十四、七十五、七十五だな」
確認するようにこちらに目を向ける教師に頷く。
「率直に言って、全教科七十五点を取るように計算してテストを受けていたんです」
「っ?なぜそんな事を…っ」
「面白くないからだ」
「おっ面白くない…?」
煉…っ。
「はっきり言って、百点満点なんてものは、教科書を全て覚えていれば取れる」
「いや…確かにそうかもしれないが…」
「私らにとっては、今回のテストが手抜きみたいなものだ。
答えなんて全部解るんだから、配点を考えなくて良い分、楽だった。
だから、今回手を抜いた事は謝れても、今までのものが手抜きだったと言われるのは心外以外のなにものでもない」
はっきり言ったな…。
素に戻すと煉は大人に素っ気なくなるからな…。
教師陣の様子は…。
うわ〜ぁ、真っ青…。
「もう良いですか。
そろそろ始業の鐘がなるんで。
結」
「…うん」
少し同情しながら、潔い煉の背を追って部屋を出た。