月陰伝(一)
横になると、端の方で背を向ける佐紀がひどく遠くに感じる。
そして、その背中が若干寂しそうだ。
「?何か落ち込む事あった?」
「……いや……」
あったよね…?
言われないと分かんない…って分かったっ。
何だ、分かるじゃん私っ。
「佐紀」
「…何だ?」
「大丈夫、好きだよ」
「っ何をっ」
ガバッと起き上がる佐紀の顔は、真っ赤だ。
「うん、ごめん。
目の前で服脱ぐとか無神経だった。
佐紀を男として認識してないとかじゃないからね。
だから、手繋いで寝て良い?」
「っ…どっ…」
「うん?
本当は、多分抱きついて眠ったら、どんなかな…?と思ってるんだけど。
”婚約者”だし?
でも、佐紀が困るのかなと思って。
譲歩してみた」
そう言うと、佐紀は一瞬何かと葛藤し、次に、言いにくそうに口を開いた。
「…っ…悪い…結…っそう言うのは、俺から言う……。
抱き締めて眠っても良いかっ…?」
そんなに気合いのいることかね?
「ふふっ。
喜んで」
楽しくなるじゃないか。
そっと包まれた腕の中は、心地よくて。
すぐにでも眠れそうだ。
「ふふっ。
弄んでないからね」
「っ…結になら良い…」
「うん。
私だけにしてね」
何だろう。
本当にすごく安心できる。
「結……」
満足しながらすり寄っていれば、かたい声で佐紀が呼び掛けてきた。
「何?」
っおっと、ここで顔を上げるのは、危険な距離かも?
「…あいつとは…その後会ってないよな?」
あいつ?
あいつ……佐紀があいつと呼ぶなら…。
「紫藤の事?」
今度は、勢いよく顔をあげてしまった。
すると、暗い顔をした佐紀と目があった。
なぜにこの状況でそんな顔?
「…そうだ…会ってないよな?」
そんなに不安な事?
「会ってはないけど、会いには来た」
「っなに?!」
佐紀は、私を腕の間に置いたまま飛び起きた。
これはかなり危うい体勢と言える。
「っ佐紀?!」
滅多な事では動揺しない私でも、この体勢は恥ずかしいっ!
だからと言って起き上がる事もできない。
その上、怒っているのか、真上から向けられる威圧感がすごい。
この状況をどうにかするには、なぜ怒っているのかを知らなくてはならない。
先程の話を良く考えてみる。
それはもう、フル回転でっ…。
「佐紀…?
えっと…紫藤とは、あれから顔を合わせてないよ?……っ」
「…なら会いに来た時はどうしたんだ…?」
怖い。
こんな佐紀は初めて見る。
「…煉が…相手してくれて……伝言って形で…直接会わなかった…よ…?」
うん。
会ってないっ。
あっちは何か気付いたみたいだったけどっ。
だからっ落ち着いてっ?!
「…他には…?
何か隠してるだろ…?」
「っ隠して…?
紫藤の事で?!」
「ッ呼ぶなっ!」
「っえっ?!…〜〜っぅっッ〜!」
いきなり逆上し、噛みつくように口付けられた。
怖い…!!
こんなのいつもの佐紀じゃないっ!
「っ……ぅ〜っっはっ佐紀っ待ってッ!」
震える体を自覚しながら、佐紀の胸を突っぱねた。
見開いた目から、涙が流れ落ちる。
それを見た佐紀が、小さく『すまない』と呟いた。
そして、その背中が若干寂しそうだ。
「?何か落ち込む事あった?」
「……いや……」
あったよね…?
言われないと分かんない…って分かったっ。
何だ、分かるじゃん私っ。
「佐紀」
「…何だ?」
「大丈夫、好きだよ」
「っ何をっ」
ガバッと起き上がる佐紀の顔は、真っ赤だ。
「うん、ごめん。
目の前で服脱ぐとか無神経だった。
佐紀を男として認識してないとかじゃないからね。
だから、手繋いで寝て良い?」
「っ…どっ…」
「うん?
本当は、多分抱きついて眠ったら、どんなかな…?と思ってるんだけど。
”婚約者”だし?
でも、佐紀が困るのかなと思って。
譲歩してみた」
そう言うと、佐紀は一瞬何かと葛藤し、次に、言いにくそうに口を開いた。
「…っ…悪い…結…っそう言うのは、俺から言う……。
抱き締めて眠っても良いかっ…?」
そんなに気合いのいることかね?
「ふふっ。
喜んで」
楽しくなるじゃないか。
そっと包まれた腕の中は、心地よくて。
すぐにでも眠れそうだ。
「ふふっ。
弄んでないからね」
「っ…結になら良い…」
「うん。
私だけにしてね」
何だろう。
本当にすごく安心できる。
「結……」
満足しながらすり寄っていれば、かたい声で佐紀が呼び掛けてきた。
「何?」
っおっと、ここで顔を上げるのは、危険な距離かも?
「…あいつとは…その後会ってないよな?」
あいつ?
あいつ……佐紀があいつと呼ぶなら…。
「紫藤の事?」
今度は、勢いよく顔をあげてしまった。
すると、暗い顔をした佐紀と目があった。
なぜにこの状況でそんな顔?
「…そうだ…会ってないよな?」
そんなに不安な事?
「会ってはないけど、会いには来た」
「っなに?!」
佐紀は、私を腕の間に置いたまま飛び起きた。
これはかなり危うい体勢と言える。
「っ佐紀?!」
滅多な事では動揺しない私でも、この体勢は恥ずかしいっ!
だからと言って起き上がる事もできない。
その上、怒っているのか、真上から向けられる威圧感がすごい。
この状況をどうにかするには、なぜ怒っているのかを知らなくてはならない。
先程の話を良く考えてみる。
それはもう、フル回転でっ…。
「佐紀…?
えっと…紫藤とは、あれから顔を合わせてないよ?……っ」
「…なら会いに来た時はどうしたんだ…?」
怖い。
こんな佐紀は初めて見る。
「…煉が…相手してくれて……伝言って形で…直接会わなかった…よ…?」
うん。
会ってないっ。
あっちは何か気付いたみたいだったけどっ。
だからっ落ち着いてっ?!
「…他には…?
何か隠してるだろ…?」
「っ隠して…?
紫藤の事で?!」
「ッ呼ぶなっ!」
「っえっ?!…〜〜っぅっッ〜!」
いきなり逆上し、噛みつくように口付けられた。
怖い…!!
こんなのいつもの佐紀じゃないっ!
「っ……ぅ〜っっはっ佐紀っ待ってッ!」
震える体を自覚しながら、佐紀の胸を突っぱねた。
見開いた目から、涙が流れ落ちる。
それを見た佐紀が、小さく『すまない』と呟いた。