月陰伝(一)
神族についての情報を、思わぬ所で知ることができたと、喜んでばかりはいられなかった。
事は、かなり深刻かもしれない。
「その烙印者は、全てを白紙にするって聞いたんだけど…?」
「そうっスよ。
烙印者は総じて一つの理念を持つんス。
『全てを白き光へと還さん』ってヤツっスね。
世界の始まりは”白き光”である元始へと還す事で、自身の穢れた魂をリセットすると言う事らしいっス。
なんで、手始めに”人”を狩るんスよ」
「人を狩る?」
「はいっ、そりゃぁもう、徹底的にっ。
烙印者によって滅ぼされた国なんて、他次元にはけっこうあるみたいっスよ?
ただ、”烙印者狩り”って機関があって、未だに全てを”白き光”に還せたヤツはいないっスけどね」
危険な事には変わりない。
「っ…〜あ〜ありゃりゃ〜ぁ…」
もう一度確認するように画面の方を向いたターナが、突然悔しそうに肩を落とした。
「どうした?」
「消えましたねぇ」
先程まで画面で地図上で点滅していた印が消えていた。
「どうやら次元の狭間に隠れたみたいっス。
こうなると無理っスねぇ〜。
その上、存在自体が不安定なんで、固有の感知データが取れないんスよ。
人に近いけど違うくらいしか分からないっス……」
カタカタとキーを叩くが、再び印が表れる気配はない。
「じゃぁ、気配を読み取れないって事?」
「こっち側に出てきても、すぐには見つけられないっスよ。
また一から検索をかけないとダメっスね」
感知ができないとなると、捕まえるのは難しいかもしれない。
そう考えた時、気になる事を思い出した。
「さっき、検索した時に、『生体データは』って言わなかった?」
「言ったっスよ?
他に引っ掛かったのは多分、術っスね。
神族の使う術には、独特の波動があるんスよ。
全部で三ヶ所。
大陸に二ヶ所と、日本に一ヶ所っスね」
モニターに映し出された地図に、印された三つの点の位置を確認する。
「三ヶ所とも、術式を組み込まれた道具みたいっス」
「魔具って事?」
「そうっス。
…〜どうも、大陸にある一つだけは、発動されてるっスね。
後は休眠状態で、最後に術が発動した場所しか特定できないっスけど。
発動してるのは映像出せるっスよ?」
「出せ」
フィリアムが、常にはない真剣な表情でぐいっと前に身を乗り出した。
映し出されたのは、黒い竜巻。
その中心には、鈍く光る玉が見える。
恐らくそれが魔具だろう。
本来、術式を道具に付与するには、かなりの高等技術が必要だ。
私の持っている腕輪や、移動用の指輪も魔具だが、これは、私が使う事を目的として創ったものなので、そう難しくはない。
魔術を発動する為の魔力は、使う者から供給する事になる。
だから、術式を付与するといっても、計算式と、魔法陣の展開をさせるだけなので、単純だ。
とは言っても、それなりの計算と複雑な術式を組み込んでできる物なので、その辺の魔術師にはできない芸当ではある。
だが、今回の神族が創ったものは、どうやら術者がいなくても発動するように出来ているようだ。
事は、かなり深刻かもしれない。
「その烙印者は、全てを白紙にするって聞いたんだけど…?」
「そうっスよ。
烙印者は総じて一つの理念を持つんス。
『全てを白き光へと還さん』ってヤツっスね。
世界の始まりは”白き光”である元始へと還す事で、自身の穢れた魂をリセットすると言う事らしいっス。
なんで、手始めに”人”を狩るんスよ」
「人を狩る?」
「はいっ、そりゃぁもう、徹底的にっ。
烙印者によって滅ぼされた国なんて、他次元にはけっこうあるみたいっスよ?
ただ、”烙印者狩り”って機関があって、未だに全てを”白き光”に還せたヤツはいないっスけどね」
危険な事には変わりない。
「っ…〜あ〜ありゃりゃ〜ぁ…」
もう一度確認するように画面の方を向いたターナが、突然悔しそうに肩を落とした。
「どうした?」
「消えましたねぇ」
先程まで画面で地図上で点滅していた印が消えていた。
「どうやら次元の狭間に隠れたみたいっス。
こうなると無理っスねぇ〜。
その上、存在自体が不安定なんで、固有の感知データが取れないんスよ。
人に近いけど違うくらいしか分からないっス……」
カタカタとキーを叩くが、再び印が表れる気配はない。
「じゃぁ、気配を読み取れないって事?」
「こっち側に出てきても、すぐには見つけられないっスよ。
また一から検索をかけないとダメっスね」
感知ができないとなると、捕まえるのは難しいかもしれない。
そう考えた時、気になる事を思い出した。
「さっき、検索した時に、『生体データは』って言わなかった?」
「言ったっスよ?
他に引っ掛かったのは多分、術っスね。
神族の使う術には、独特の波動があるんスよ。
全部で三ヶ所。
大陸に二ヶ所と、日本に一ヶ所っスね」
モニターに映し出された地図に、印された三つの点の位置を確認する。
「三ヶ所とも、術式を組み込まれた道具みたいっス」
「魔具って事?」
「そうっス。
…〜どうも、大陸にある一つだけは、発動されてるっスね。
後は休眠状態で、最後に術が発動した場所しか特定できないっスけど。
発動してるのは映像出せるっスよ?」
「出せ」
フィリアムが、常にはない真剣な表情でぐいっと前に身を乗り出した。
映し出されたのは、黒い竜巻。
その中心には、鈍く光る玉が見える。
恐らくそれが魔具だろう。
本来、術式を道具に付与するには、かなりの高等技術が必要だ。
私の持っている腕輪や、移動用の指輪も魔具だが、これは、私が使う事を目的として創ったものなので、そう難しくはない。
魔術を発動する為の魔力は、使う者から供給する事になる。
だから、術式を付与するといっても、計算式と、魔法陣の展開をさせるだけなので、単純だ。
とは言っても、それなりの計算と複雑な術式を組み込んでできる物なので、その辺の魔術師にはできない芸当ではある。
だが、今回の神族が創ったものは、どうやら術者がいなくても発動するように出来ているようだ。