月陰伝(一)
黒い竜巻が通り過ぎた道から、回り込んだ魔術師達が一斉に魔術を放った。
しかし、真っ直ぐに複数の軌跡を描きながら、鈍く光る竜巻の中心へと放たるた術は、威力が足りないのか、外を覆う風の壁を突破する事ができなかった。
「レベルが足りないっスね。
今計算したっスけど、最高ランクのトリプルSまではいかなくても、Sランクの術式じゃないと、あの壁は破れないっスよ」
「すぐにあちらに連絡しろ」
「ラジャっス」
インカムを着け、ターナが物凄い勢いでキーボードを叩く。
その間も、画面には懸命に術を放つ魔術師達が映っている。
「不味いな…結界がもちそうにない…」
フィリアムのその呟きに、必死で目を凝らしながら、他に対策はないかと考える。
分かっている事は四つ。
人が触れてはいけない。
人以外でも、巻き込まれれば、普通の竜巻と同じ被害が出る。
結界は黒い竜巻に押し負けてきてはいるが、もち耐える事はできる。
風の壁は、Sランク以上の術でなくては破れない。
ならば…っ。
「こちら月陰情報部、ターナ・リドヴィ」
回線を繋げたターナが、インカムマイクに話しかける。
『っ”電子の”……今は取り込み中です』
「分かってるっスよ。
竜巻の風の壁を突破するには、Sランク以上の術じゃなきゃダメっスってことをお知らせに上がったんス」
『っっ……っマリュヒャ様ッ…っ……っ』
マリュヒャに慌てて伝えに行ったようだ。
その間に、どうしても気になっている事をターナに伝えてみる。
提案した事を、直ぐ様実行してくれた。
再び出現した使い魔である黒い蝶を、ある場所に転移させる。
そして、私の予想が正しかったとターナは頷いて答えた。
その時、スピーカーからマリュヒャの声が聞こえてきた。
『ターナ、その情報は本当か?』
「本当っスよ。
それと、わかってるかもしれないっスけど、あれは、人と人の手を介した物を消滅させるっス」
『…やはりそうか……ならば……』
その声と、画面の端に映っているマリュヒャの表情に、決意した。
「ターナ、マイクを…っ」
渡されたインカムをはめ、はっきりと言葉を紡いだ。
「マリュー様っ」
『っっ結?!』
驚きの声を上げるマリュヒャに一瞬苦笑し、次に考え出した作戦を伝える為、口を開いた。
「マリュー様、よく聞いてください………」
丁寧に、はっきりと作戦の内容を告げる。
『わかった。
すぐに始めよう』
全てを伝え終わると、急に不安が込み上げてきた。
「マリュー様……」
作戦は万全だ。
だが……。
『結華。
心配するな。
今日中に、必ず一度戻る。
律と屋敷で待っていてくれ』
「……っはいっ…」
大丈夫だ。
マリュー様は約束は守る。
「早く帰ってきてください。
そうしたら、今日の夕食は私が作ります。
みんなで食べましょうっ。
お待ちしています…っお父様…」
サリーも、マーサも、カインも一緒に。
「なら、俺も混ざってやろう」
『っお前は要らんっ。
さっさと仕事しろっ』
フィリアムがマイクに向かい、宣言した事で、一気に気が抜けた。
「フィリィ……台無しっスよ…」
しかし、真っ直ぐに複数の軌跡を描きながら、鈍く光る竜巻の中心へと放たるた術は、威力が足りないのか、外を覆う風の壁を突破する事ができなかった。
「レベルが足りないっスね。
今計算したっスけど、最高ランクのトリプルSまではいかなくても、Sランクの術式じゃないと、あの壁は破れないっスよ」
「すぐにあちらに連絡しろ」
「ラジャっス」
インカムを着け、ターナが物凄い勢いでキーボードを叩く。
その間も、画面には懸命に術を放つ魔術師達が映っている。
「不味いな…結界がもちそうにない…」
フィリアムのその呟きに、必死で目を凝らしながら、他に対策はないかと考える。
分かっている事は四つ。
人が触れてはいけない。
人以外でも、巻き込まれれば、普通の竜巻と同じ被害が出る。
結界は黒い竜巻に押し負けてきてはいるが、もち耐える事はできる。
風の壁は、Sランク以上の術でなくては破れない。
ならば…っ。
「こちら月陰情報部、ターナ・リドヴィ」
回線を繋げたターナが、インカムマイクに話しかける。
『っ”電子の”……今は取り込み中です』
「分かってるっスよ。
竜巻の風の壁を突破するには、Sランク以上の術じゃなきゃダメっスってことをお知らせに上がったんス」
『っっ……っマリュヒャ様ッ…っ……っ』
マリュヒャに慌てて伝えに行ったようだ。
その間に、どうしても気になっている事をターナに伝えてみる。
提案した事を、直ぐ様実行してくれた。
再び出現した使い魔である黒い蝶を、ある場所に転移させる。
そして、私の予想が正しかったとターナは頷いて答えた。
その時、スピーカーからマリュヒャの声が聞こえてきた。
『ターナ、その情報は本当か?』
「本当っスよ。
それと、わかってるかもしれないっスけど、あれは、人と人の手を介した物を消滅させるっス」
『…やはりそうか……ならば……』
その声と、画面の端に映っているマリュヒャの表情に、決意した。
「ターナ、マイクを…っ」
渡されたインカムをはめ、はっきりと言葉を紡いだ。
「マリュー様っ」
『っっ結?!』
驚きの声を上げるマリュヒャに一瞬苦笑し、次に考え出した作戦を伝える為、口を開いた。
「マリュー様、よく聞いてください………」
丁寧に、はっきりと作戦の内容を告げる。
『わかった。
すぐに始めよう』
全てを伝え終わると、急に不安が込み上げてきた。
「マリュー様……」
作戦は万全だ。
だが……。
『結華。
心配するな。
今日中に、必ず一度戻る。
律と屋敷で待っていてくれ』
「……っはいっ…」
大丈夫だ。
マリュー様は約束は守る。
「早く帰ってきてください。
そうしたら、今日の夕食は私が作ります。
みんなで食べましょうっ。
お待ちしています…っお父様…」
サリーも、マーサも、カインも一緒に。
「なら、俺も混ざってやろう」
『っお前は要らんっ。
さっさと仕事しろっ』
フィリアムがマイクに向かい、宣言した事で、一気に気が抜けた。
「フィリィ……台無しっスよ…」