月陰伝(一)
これでは皆が起きてしまう。
どうしようかと小さな体を抱き上げて途方にくれていれば、後ろから声が掛けられた。
「大丈夫か?
こちらに来なさい」
「お父様…」
「ぐずっふっふぅっ…っ」
よしよしと背中を叩きながら、マリュヒャについて、私室へと入る。
「そこにかけなさい」
すすめられたソファーに座り、グズつく律をなだめる。
マリュヒャが隣に腰を下ろし、律の頭を優しく撫でた。
「律、そんなに泣かずとも、結は今日からこの屋敷に住む。
泣き止みなさい」
っだから、どうしてそう言う事になったっ?
「ッふっ…ほんと…?
ねぇさま、ずっといる?
このいえのこになるの?」
「そうだ。
お前と結は私の子だ。
これで家族一緒だな」
「っうんっ。
なら、ねぇさまいっしょにねてください」
「……いいよ…」
わぁいと喜ぶ律は、本当にかわいい。
思わずギュッとしてしまう。
律は私同様、真紅一族の血を継いでいる。
生まれてすぐに、かつての父と同じ扱いをされそうになり、それを庇った両親が殺されてしまった。
それを知ったマリュヒャが、養子として引き取ったのだ。
「じゃぁきょうは、とぉさまとねぇさまのまんなかでねます」
………うん?
「そうか。
そうなるか。
いいぞ」
………え〜っと?
今何と言った?
まん中?
それはつまり…?
「…お父様と…?」
「はいっ。
とぉさまがかえってきたひは、いっしょにねるんですよ?」
…知らなかった…。
ここで遠慮しますと言ったらどうなるだろう…っいや…言えるわけがないっ。
「え〜っと…ねぇさまは、シャワーを浴びてさっぱりしてくるから、律は先に寝ていなさい?」
「う〜ぅはい…」
よしよし。
「私もすぐにシャワーを浴びて寝るからな。
律は先にベットに入りなさい。
結、お前も早くな」
「……はい…」
誤魔化すのは無理か……と言うか、マリュー様は一緒に寝るの嫌じゃないのか?
律をベットに寝かせ、部屋のシャワールームへと向かうマリュヒャに、思いきって尋ねた。
「あの、マっ…お父様?」
「なんだ?」
そうだここにきたのは、尋ねたい事があったからだ。
「お父様、ご迷惑ではありませんか?
本当の娘の様に思ってくださるのは嬉しいのですが…私は、重荷にはなりたくありません…。
お父様にとって、私は親友の娘と言うだけです。
私も亡き父も、貴方に迷惑を掛けたくはない」
尊敬する上司であり、本当の父よりも父親だと思える人。
この人とシェリー様の娘にずっとなりたかった。
そう思っていれば、スッと頬を包まれ、顔を上に向けられた。
正面に立ったマリュヒャと真っ直ぐに目が合う。
「お前は私が嫌いか?」
「?いいえ」
「ならば良いだろう。
お前は私の娘だ。
誰が何と言おうとな。
お前の母が勘当すると言うならば好都合だ。
誰に憚る事なく、娘だと公言できる。
迷惑であるはずがない。
親友の娘でしかないだと?
バカな事を考えていないで、さっさと支度をしてきなさい」
そう言ってマリュヒャは、さっさとシャワールームへと入っていった。
どうしようかと小さな体を抱き上げて途方にくれていれば、後ろから声が掛けられた。
「大丈夫か?
こちらに来なさい」
「お父様…」
「ぐずっふっふぅっ…っ」
よしよしと背中を叩きながら、マリュヒャについて、私室へと入る。
「そこにかけなさい」
すすめられたソファーに座り、グズつく律をなだめる。
マリュヒャが隣に腰を下ろし、律の頭を優しく撫でた。
「律、そんなに泣かずとも、結は今日からこの屋敷に住む。
泣き止みなさい」
っだから、どうしてそう言う事になったっ?
「ッふっ…ほんと…?
ねぇさま、ずっといる?
このいえのこになるの?」
「そうだ。
お前と結は私の子だ。
これで家族一緒だな」
「っうんっ。
なら、ねぇさまいっしょにねてください」
「……いいよ…」
わぁいと喜ぶ律は、本当にかわいい。
思わずギュッとしてしまう。
律は私同様、真紅一族の血を継いでいる。
生まれてすぐに、かつての父と同じ扱いをされそうになり、それを庇った両親が殺されてしまった。
それを知ったマリュヒャが、養子として引き取ったのだ。
「じゃぁきょうは、とぉさまとねぇさまのまんなかでねます」
………うん?
「そうか。
そうなるか。
いいぞ」
………え〜っと?
今何と言った?
まん中?
それはつまり…?
「…お父様と…?」
「はいっ。
とぉさまがかえってきたひは、いっしょにねるんですよ?」
…知らなかった…。
ここで遠慮しますと言ったらどうなるだろう…っいや…言えるわけがないっ。
「え〜っと…ねぇさまは、シャワーを浴びてさっぱりしてくるから、律は先に寝ていなさい?」
「う〜ぅはい…」
よしよし。
「私もすぐにシャワーを浴びて寝るからな。
律は先にベットに入りなさい。
結、お前も早くな」
「……はい…」
誤魔化すのは無理か……と言うか、マリュー様は一緒に寝るの嫌じゃないのか?
律をベットに寝かせ、部屋のシャワールームへと向かうマリュヒャに、思いきって尋ねた。
「あの、マっ…お父様?」
「なんだ?」
そうだここにきたのは、尋ねたい事があったからだ。
「お父様、ご迷惑ではありませんか?
本当の娘の様に思ってくださるのは嬉しいのですが…私は、重荷にはなりたくありません…。
お父様にとって、私は親友の娘と言うだけです。
私も亡き父も、貴方に迷惑を掛けたくはない」
尊敬する上司であり、本当の父よりも父親だと思える人。
この人とシェリー様の娘にずっとなりたかった。
そう思っていれば、スッと頬を包まれ、顔を上に向けられた。
正面に立ったマリュヒャと真っ直ぐに目が合う。
「お前は私が嫌いか?」
「?いいえ」
「ならば良いだろう。
お前は私の娘だ。
誰が何と言おうとな。
お前の母が勘当すると言うならば好都合だ。
誰に憚る事なく、娘だと公言できる。
迷惑であるはずがない。
親友の娘でしかないだと?
バカな事を考えていないで、さっさと支度をしてきなさい」
そう言ってマリュヒャは、さっさとシャワールームへと入っていった。