天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
おもわずはにかみそうになる。なんか、すげーカップルっぽい……!
「あー小百合おはようっ!!」
「みどり、おはよう。どうしたのそんな急いで」
「今日放送当番だったの、忘れてたーっっ!」
まったく沼岡は騒がしいと、和也は髪を振り乱して校舎に駆け込んでいく級友、沼岡みどりを呆れ顔で見送って、次の瞬間、おや、と眉根を寄せた。
さらに目を細めて一点を凝視する。
彼女の手からぶら下がったキーホルダーが陽射しに反射して、思いがけない強さで輝いた。
携帯を握りしめているにしてはその拳の形がやけに丸く収まっている。
(自転車の鍵? ……いやてか、今のどっかで)
見覚えのあるキーホルダーだった。
愛らしい表情、丸っこい体躯、お座りしたそれはかわいらしい……くまさん。
「わたし以外の女にうつつ抜かしたらお仕置きよ」
下足箱の前、通りしなにそう囁いて内履きをつかんだ橘が器用に片眉を上げた。