天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
翌日。
昨日できなかった話をするべく、和也は橘を探していた。
渡り廊下の途中、中庭の奥にそれらしい人影を見つけて目を凝らす。
茂みに隠れていまひとつ判然としないが、おそらくそうだろうという自信はあった。
そちらへ向かって歩みを進めた矢先、いきなり彼女の姿が別の人影によって視界から消える。
反射的に近くの茂みに隠れて様子を窺うと、どうやら上級生と立て込んでいる最中らしい。
相手は男で、ここまで声は届かないが、互いの表情が固いことから明るい話題でないだろうとは容易に察しがつく。
と、男の腕が上がり、和也はとっさに腰を浮かせる。
身構える橘に、和也まで奮い立つ何かがあった。
暴力を振ろうものなら見てろと殺気だったのも束の間、男の腕は彼女の顔の脇をすり抜けてそのまま壁にぶつかった。
その体勢はまさに、
(―――リ、リアル壁ドン!)