天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠

 思わず目をみはるも、そっちか、とほっとしている暇はない。
 壁ドンだろうと彼女の窮地にはちがいない。


「―――橘!」


 思い切って声を上げると、男は忌まわしげに舌打ちをしてそれ以上の無体はせず、そそくさと逃げていった。


「だいじょうぶだった!? 今の誰」

「ありがとう……。たしか、三年生の先輩。
 前からずいぶんつきまとわれてて、最近は上手くかわしてたんだけど、さっきばったり会っちゃって……助かった」


 力なく微笑む彼女に安堵する一方、むくむくと憤りが沸いてくる。あんな横暴、許される道理がない。

 健気でか弱い橘をよくも怯えさせやがって、と和也は眉根を上げて男の去っていった方角を睨めた。


 そのときだった。



「―――うわっ!!?」


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