天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
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(な、なんだよこれ!)
思考の追い着かない現状に咄嗟に声がでなくなる。
漂う香水の匂いに寒気がした。
すくんだまま、和也は震える唇を引き結ぶ。
橘は笑みを深くして、軽く首を傾けた。
「―――わたしが好き?」
声まで艶めかしく響いて、和也の理性を侵食するようだ。
得体の知れないものとの遭遇による恐怖と年並みの性欲と、逃げ場のない現状に否応なしに気が昂ぶって、和也はごくんと生唾を飲み込んだ。
好きって、なんだ。
恋愛してます? 昨日はそうだとわかったけれど、今のこれは?
―――……強迫?
「好きって言わないとキスしちゃうから」
吐息が触れて戦慄する。
被さる彼女の影。コンプレックスである身長の低さが仇となり、この状態ではおそらく誰からも気づいてはもらえず、従って、救いの手は差し出されない。