天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
それでも諦めきれずに、黒目を渡り廊下の方へと向けた、次の瞬間。
「―――はい、時間切れー」
無情の声。
「……っっ!!?」
抗う余地なく……ほんとうに、キス、されてしまった。ふぁ、ファーストキスだったのに……。
―――てか睫毛ながっ!
と、どうでもいいことにしっかり感想を抱く。しかもキス、意外と優しい…………とか俺バカ!?
―――いや! いやいやいやいや!
「ばっ、ばかなのはおまえだー! はっ、離れろこらッ、腕をどかせ―――ひえっ!」
羞恥に耐えかね身を捩るも、今度は首に手をかけられて和也は立ち竦む。
「わたしの束縛から逃れようなんて、無茶な考えはおよしなさい」
「………」
……高飛車な科白がおそろしく様になっている。
橘だからこそ、あほみたいにリアルに効力を発揮する悪魔の脅し……。
魂を抜き取られたかのごとく、和也はたちどころに抵抗する気力が萎え、そのうち迷い子みたいに半泣きになる。
(た、たしかに俺、昨日、橘にすげぇひどいことしたけど、でも、ここまでされる謂われってある……?
他人に罵られるのはまだわかるけど、本人からこんな仕打ちって。
しかもなんかめっちゃ人格変わってるし、勝手だし、それにおよしなさいって……俺、言うこときかないとどうなっちゃうのー!)
俺より10センチほど身長の高い彼女は悠々と俺の頭に触れ、頬を撫で、毛先を弄ぶ。
その間も、我が子にするそれのようにまぶたにキスを落としたり、頬ずりをしてきたり、
耳たぶを甘噛みされたときには―――