天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
やわらかな陽射しを受け、キューティクルの整った髪には文字通り天使の輪っかができている。
女子の中心にいて、彼女だけがきらきらと花に囲まれているように和也の目には映るのだが、
それはきっと彼だけの錯覚ではあるまい。
見るたびに、自然と吐息が青くなりそうな勢いで橘は美しい。
容姿だけでなく、彼女は頭もいい。
成績は常に学年トップ。運動神経も悪くない。
弁当は常に自身の手作りで、裁縫もお手の物という噂。
先生たちからの評判も群を抜いて丸、立ち居振る舞いもいちいち洗練されていて隙がない。
それなのにちっともお高くとまっていないという気さくさ。
男遊びをしないお堅さがまた好ましい。
まさに、現代のやまとなでしこそのもの!
……という、おそろしくできた娘なだけに、男子はなかなか近寄れない相手なのだ。
彼女の方は垣根を作らないのに、男子が勝手に敷居を高く設定してしまう。
和也は性格上、そういった尻込みやら怖じ気といったものとは幸い無縁なため、意識したことはないのだが、
今、彼と共に橘のもとへと向かっている連中の中には、ここぞとばかりに彼女の傍に寄ろう、喋ろうと邪心を抱いている者がいないとは限らない。