天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
「ハンッ、最低? 最低なのはどっちよ」
肩をすくめる彼女には欠片も反省の色がない。そればかりか、ますます尊大になって、
「告られる側の気持ちも考えないで、よくもわたしに赤っ恥をかかせてくれたわ」
「そ、それは悪かったと思ってるけど、お、俺たちはただ、笹原を応援したくて―――」
「ゲーム感覚で人の恋路を応援してるなんて言わないで。恋は、その人にとっての戦いなのよ。今のわたしと、あなたのようにね。
喰うか喰われるかなの。……わかる?」
「み、みんながみんなそんな欲望剥き出しに相手を狩りにはいかないだろっ」
「行くわよ。だって、欲しいんだもの。
だから、わたしにあなたの愛を頂戴」
「いっ、いやだッ! てか、むっ、無理だ! だ、だいたいおまえは本当に俺が好きなのか!?」
愛を寄越せなどと脅してくる女心をまっすぐ信じられるわけがない。
「好きだって言ったでしょ? なに? キスまで疑うわけ? だったらあんまりよ。好きじゃない男にキスなんかしないわ。
わたしは無垢ではないけれど、手当たり次第に穢しても構わないと思うほど自分も女も捨ててない」
「好かれてない男に無理やりキスするのは自分を穢すことに入らないのかよっ」
「入らないわよ」
あっけらかんと彼女は言う。
「入るわけないでしょ。なんならキス以上のこともしましょうか?」
ぼっと火がついたように和也は赤面した。