天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
(とんでもないやつに惚れられちゃったよ、まったく……)
鱗粉を撒き散らすように、全身からオーラを放出しつつ颯爽と廊下を歩いていく彼女の後ろ姿を見送って、和也は深々とため息をついた。
……和也が懸念しているのは、橘が笹原に接触することだけではない―――。
己自身も……―――橘の、隙あらば彼の手を握ろう、キスをしようという、奥ゆかしさの欠片もない、剥き出しの欲望の餌食になりかねなかった。
神経質の人が胃痛になるみたいに、俺は頭が痛い……。
バカが頭が痛くなるなんて、ちょっとした病気じゃないか。
もはや、彼の中で揺るぎなく定着した橘小百合のやまとなでしこという評価は、根底から崩壊している。