天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
「やだよっ」
「じゃあする」
予告を受けてとっさに手で防ごうとするも、すんでのところでまたぞろ手首を掴まれて、いただきます的に噛みつかれてしまう。
意識まで食い散らかされそうなキスの後、橘は満足そうに顔を離した。そして、今の今まで和也のが触れていた唇をぺろりと舐める。
くらりと眩暈がして、身体が燃えるように熱くなり、和也は我知らず鼻を押さえていた。
「み、見られたらどうするんだよっ」
幸い、鼻血は出ていない。
「見られるって何を? ああ、上にあった目当ての物が取れなくて、女子に代わりに取ってもらったこと?」
「ちっげーよ、ちがうだろ、んなことは今は一ミリも問題じゃねーよっ」
「―――じゃあ……」
思案顔で言いさして、やおら橘は俺を抱きしめていた腕をほどくと、俺の身体を挟むようにしてそっと床に手を着いた。
普通にしてても視線の高さはばっちりだが、敢えて彼女は掬うような形を取って和也を見つめた。
その眼差しとくねりとした体勢だけで色香が二倍にも三倍にもなるようだ。
薄闇でもほのかに光を放つ白い太ももに、いきなり口中の唾液の量が増える。
―――触れたい、という衝動に無意識に目が据わり、自然、呼吸が深くなる。
本性は悪魔でも、悪魔な部分を差し引いても十分余りある魅力が、男の欲求を駆り立てる魅力が彼女には、悔しいが、確かにあるのだ。