天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
2-3
「―――井之口くんが泣いていい理由なんかひとつもないのよ?」
頬を寄せ、橘は和也の耳許で、呼気の量を多めに語りかける。
「あらゆる責任を負ってるのはあなたなの。わたしの心を奪って、ふざけたゲームを考案した負い目もある。
どう落とし前をつけてくれるの?」
しなだれかかるようにして、橘は和也の襟足に指を絡ませる。
泣いているのは無論、己の情けなさに対してだが、涙が出るほど感情が昂ぶる原因は大きく分けて嬉しいか哀しいかのどちらかでしかなく、この状況においては後者でしかあり得ない。
それと知りながら敢えて傷口を抉るかのごとく追い詰めてくるなんて……。