天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
気づかいや思いやりの欠片もない、強引で、勝手で、そのつど心臓を鷲づかみにされるようなキスでも、回数を重ねればその味を知り、くせになる。
破壊的な美貌や、蠱惑的な眸にも理性は侵され、砕け、溶ける……。
それを恋と呼べるかはわからない。
もしかしたら、十六年生きてきて気づかなかっただけのただのド変態なのかもしれない。
それでも、と和也は思う。
見た目だけは無垢そのものの橘小百合に、中身は完全なる悪魔だが見た目だけは(以下略)、前のめりにぐいぐい押してくる色気や官能といった、邪な下心以上の何かを欲しているような、そんなおこがましい思いが胸を過ぎって、
和也は、すきま風が背筋を掠めたようにぎくりとした。
触れていたままになっていた橘の指先がふいに動いて我に返る。
その事実にもまた愕然とした。
彼女の躊躇なきスキンシップが、いつしか和也の一部となりかけている―――。
「好きになったものは抗えないのよ」