天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
一拍の静寂を置いて、にわかに教室が騒然となる。
告白を受け、橘は目を瞬いて固まった。
まん丸に見開いたまま視線を巡らすと、
ひとりとして欠けることなく、皆が自身を注視している。
天使はみるみる真っ赤になって、ぱっと後ろを向いてしまった。
勢いで浮いた髪の流れがちょうど天使が羽を広げたみたいで、おもわず呻く。
その反応に、男子側からかすかにどよめきが起こった。
もしやまんざらではないのでは、という期待と、だとすればよくあの橘を落とせたな、という感嘆とが入り混じる。
「ちっ、ちがうから! その、あの…………おっ、おまえらサイテー!!」
遅れて駆け込んできた笹原が真っ赤になって声を上げると、こちらもすぐさま踵を返し、脱兎のごとく逃げ出した。
「待てよ笹原ー」
「照れんなって」
粗野な口調で揶揄を飛ばしながら、和也たちも笹原をなだめに行こうとする。
行きかけて、何気なく教室を振り返った先、なぐさめるように女子に囲まれた橘とふいに目が合った。