天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠

2-4


 黒田に頼まれていた備品を渡し、和也は周囲に注意深く目を光らせながら笹原と教室への道を戻る。

 途中まで来たところで、ふと笹原がこぼした。


「俺、いつになったら橘から返事聞けるんだろ……。
 勢いでちがうなんて言っちゃったから、ただのからかいだったんだろうって適当に処理されちゃったのかな」


 笹原の声がけっこう真剣に鬱いでいて、和也まで疼痛がした。


 真剣味にはたしかに乏しい行為である。

 告白というものをものすごく軽んじている感は否めない。
 小学生がやりそうなことを、同じ小学生でさえ信じないだろうものを真に受ける高校生がいようはずもない。

 それ以前に、橘本人はおそらく、笹原の健気な思慕の切れ端すらも気にしていない……。


 告白は100%失敗に終わった。


「好きな人とか、いんのかな」


 ……答えられるはずのない独り言とも問いかけともつかぬ、揺れる気持ちをそのまま声にしたような科白に、和也は曖昧に相づちを打って、なあ、と逆に問いを振った。


「今さらだけどさ、その、どうして橘なの? やっぱ見た目がいいから?」

「まさか!」


 笹原は目を剥いて咎めるような声を上げた。


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