天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
みんな大好き、橘小百合。
橘に注がれる生徒たちの信頼と好意は盤石で、そこにちょっとだけ染みを落としてみたところで傘みたいに弾かれる。
それが目に見えているから無駄だと思う。
「俺さ、あらためて告白し直そうと思ってんだよね」
「え……」
間の抜けた声がこぼれたが笹原は気にせず、うん、とさらに自身を鼓舞するように頷いた。
「罰ゲームのおかげで踏ん切りがついたっていうか。
誤解されたままってのはやっぱ哀しいし、いくら気にしてなさそうな素振りをしてても、内心では橘さん、ショックだったかもしれないだろ。
意味不明な告白をされた上に当人の俺にフられてさ、ああいう遊びの材料に利用されて平気でいられるわけないじゃん。
このままってのは絶対だめだし、何より男らしくない」
イノたちを責めるつもりはないけど、と笹原は先に言ってから、
……今さら手遅れかもしれない、両想いになる以前に許してさえもらえないかもしれないけど、筋は通したいんだ、自分のためにも―――
……それから、橘のために。
橘が、このさき誰かいい人と巡り会ったとき、万が一にもあのときの告白が男に対してのトラウマにならないように、男は皆軽薄だという歪んだ先入観を払拭し、二の足を踏ませないように、と彼は真剣に語る。
(これは、さ、もう……)
……器がちがう、と和也は完全に打ちのめされた思いで、言葉を失くした。