天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
たとえば。
もし付き合うことになれば、心臓がいくつあっても足りない思いをすることはとりあえず間違いないだろう。
が、強引なところを除けば彼女は基本思いやりがあって朗らかで慎み深いやまとなでしこなのだ。
二人でいるときだけ変なスイッチが入ってしまうのも、見方を変えれば一途が過ぎるゆえに起こってしまう愛ある暴走だ。
恋は盲目なんて言ったりもするしな。
二面性の彼女の裏の顔が現れるときは決まっている。
どこにでもいるカップルのようなデートをするときにはちゃんと自制が働いて、人並みに楽しい時間を過ごせると思う。
橘を隣に町中を闊歩できたら、さぞや優越感に浸れることだろう―――というまたぞろ邪な欲望が脳裏を過ぎりつつ、
……つまるところ、橘との交際はあながち悪くもないかもしれないという結論に至る。
だいぶ上からの結論だが、橘の、暑苦しいほどの情熱はすでにいやというほど経験済みで―――烈しすぎて逆にちょっと疑念を感じないこともないのだが、
……あとは本人である俺がどちらの選択を取るかというところでは、どうあったって見下ろすような思案にもなる。
ほとんどぽっと出の俺が橘の彼氏になったと周囲に知れた瞬間、待つ未来は飴か、鞭か……わからない。