天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠

　周囲の評価からいって、笹原を基準に、完全にその枠から埒外にされていた俺が橘を好きになった場合、

　つまり橘の想いを受け入れた場合、その先で起こりうること―――想いを返した瞬間に自然移行される恋人という立場になった際の周りへの影響はおそらく甚大なものになる。

　付き合えばそれなりに楽しいだろう―――性欲を満たしてくれる事に関してはすでに許可をもらっているようなものだからそのオプションもけっこうでかい……―――


　けれど、橘小百合はそれだけ皆に愛される存在で注目の的なのだ。


　当然、パートナーもその対象となりうる。

　楽しそうだからという浮ついた理由だけでは俺はきっと周りからの重圧に負けて、すぐにもその手を離してしまう。

　……男として、それはひどくみっともないことだけれど、俺はそこまで自分に自信がない。


　乗り越えようという気概を抱けるほど、橘に惚れているとも、まだ……。



(……迷うのも、楽じゃない)



　周りからすれば贅沢な悩みでも、和也自身はそれで浮かれているわけでは微塵もない。

　内実を知らずとも、築かれた他人からの評価は決して無視できないほど大きいのだ。