天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
1-2
おかしな話だ……。
胸がざわざわする。
橘を好きなのは笹原であるはずなのに、和也は残りの授業中ずっと彼女を目で追っていた。
見間違いだったのかもと思い直すほど、授業中の彼女は普段どおりの明るい女の子に戻っていたけれど、
それでも不思議と目が離せなかった。
「井之口、おまえ、部活日誌は持ってきたか? 俺、こないだの練習試合の結果、うっかり挟んだまま回しちまったっぽいんだけど」
「ああ、はい、挟まってたっすよ。だから日誌書いてそのまま持ってきたっす!」
「マジ? よかった。あとで使うから、それくれる?」
「はい―――って、あれ?」
バッグを底まで漁るも見当たらない。
「うっそ、えっ、なんで!」
「忘れたのか?」
「いや、そんなはず……! ちゃんと俺、ここ入れて持ってきて―――」
言いかけて、そうだ、と和也は目を開ける。
教室の机の上!
とっさに書き足したいことを思い出したのだ。
それで、部活に行く前にノートを取り出して、おそらくそのまま―――……。
「と、取りに行ってくるっす!」