天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
ほどなくして、背中にあった心地よい体温と、決して苦ではない重みが同時に和也の元を去ると、
彼は、安堵以上に寂寥感が強く胸を騒がせたことを思ったよりも平静に受け止めていた。
そうなるだろう、という予感がどこかにあった。
傍にいないと、さびしい。
……もはや認めざるを得なかった。
それでも自らは、自身の心を手をつかねて静観し、裏腹に、身体はそれ自体が耳になったみたいに背後の気配に鋭くなっている。
かさかさと乾いた音が届き、ときおりガシンとホッチキスを止める音がする。
弾かれたように和也は立ち上がった。
「無理して手伝ってくれなくてもわたし一人でなんとかなる」
「風邪っぴきのくせに」
「恋をすると人間胸がいっぱいになるのよ。圧迫されれば咳も出るわ」
「……はいはい」
軽く受け流して和也が半分を、残り半分を彼女がまとめると、格段に効率が良くなって、着実に部数を重ねていく。