天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠

 *


 ……キスをしようとして、とどまる。

 妨害されて果たせなかったのではなく、小百合の意思てそうなった。


 わざとか無意識か、あるいは何かしらの感情が働いているのか、彼は半端に終わったキスに心なしか落胆を……さらには苦痛を感じているようだった。

 え、してくれないの?


 気を持たせたつもりはないけれど………

 こんなとろけるようなもどかしい表情は、まんざらでもなく期待していた所為だろうか。



 だとしたら、うれしい。



 しかし唇には触れられない。



 小百合は代わりに頬にキスを落とすと、後ろ髪を引かれる思いで背を向けた。



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